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文化財保護法第93条に罰則はある? 埋蔵文化財包蔵地での掘削

2023年10月30日
  • その他
  • 文化財保護法
  • 93条
  • 罰則
文化財保護法第93条に罰則はある? 埋蔵文化財包蔵地での掘削

令和5年(2023年)6月、熊本県山都町の「通潤橋」が近世最大級の石造アーチとして国宝に指定されたほか、京都府内などの建造物8件が重要文化財に指定されました。また、令和5年4月の時点での熊本県内の指定文化財の数は、有形・無形や記念物などすべてふくめて2974件となります。

個人が、文化財を見つけるために安易な気持ちで発掘を行うことは危険です。必要な手続きを経ずに勝手に発掘を行うと、「文化財保護法」に違反する可能性があるためです。

本コラムでは、とくに「文化財保護法第93条」の規定に注目しながら、手続きを経ずに発掘を行うことで問われる罪や罰則などを、ベリーベスト法律事務所 熊本オフィスの弁護士が解説します。

1、偶然にも土器や古墳を発見したらどうする?

まず、自宅の敷地や農耕地で地面を掘っていたところ、偶然にも土器や古墳の一部などの埋蔵物を発見した場合にとるべき対応を解説します。

  1. (1)発見時の状況を変えずに市町村の教育委員会に届出をする

    文化財保護法第96条では、「土地の所有者・占有者が貝塚(貝づか)・住居跡・古墳などの遺跡と認められるものを発見したときは、…その現状を変更することなく、…遅滞なく文化庁長官に届出をしなければならない」と定められています。
    文化庁長官への届出は、市町村の教育委員会を窓口に都道府県教育委員会を経由して提出されるため、発見したときの状況を変えずに市町村の教育委員会にある文化財課に連絡しましょう

    なお、非常災害などのため必要な応急措置をとる場合は、その限度内で現状の変更が許されます。

  2. (2)出土品を持ち帰ってはいけない

    たとえ自分の土地から発掘したものでも、土器などの出土品を勝手に持ち帰ったり、処分したりしてはいけません。
    出土品は、法律のうえでは「遺失物」、つまり誰のものか分からない落とし物と同じ扱いになります。
    そして、持ち主が分からないものを自分のものにすると、刑法の遺失物等横領罪に問われてしまいます

    通常、落とし物を拾った場合はその場所を管轄する警察署に「拾得届」を提出することになります。
    しかし、出土品については「埋蔵物発見届」によって警察に提出するように定められています。

2、文化財保護法での規制|発掘に届出が必要な場合とは?

文化財保護法では、埋蔵文化財を見つける目的で勝手に発掘したり、埋蔵文化財が存在することが周知されている土地を勝手に発掘したりする行為が規制されています。

  1. (1)埋蔵文化財の発掘調査には届出が必要

    文化財保護法第92条1項は、埋蔵文化財について発掘調査を行う場合、発掘に着手する30日前までに文化庁長官に届出をしなければならないと定められています
    古墳などの遺跡や土器などを発見・調査する目的で発掘を行う場合は届出が必要です。

    この場合の届出も、市区町村の教育委員会が窓口になります。
    届出をしないと「無届発掘」になるので、かならず届出をしましょう。

  2. (2)埋蔵文化財包蔵地で発掘・掘削を行う場合も届出が必要

    埋蔵文化財が存在していることが周知されている土地を「埋蔵文化財包蔵地」といいます。
    文化庁によると、令和3年時点で熊本県内には8123件の遺跡があり、これらの遺跡内で土木工事など発掘調査以外の目的で発掘・掘削を行う場合は届出が必要となります。

    「発掘調査の目的ではないなら届出をしなくてはよいのではないか?」と考える方もおられるかもしれません。
    しかし、開発などのために土地を発掘・掘削してしまうと、遺跡や埋蔵文化物が破壊されてしまい、二度と元には戻りません。
    したがって、埋蔵文化財包蔵地にあたるエリアでは、文化財保護法第93条1項にもとづいて、発掘・掘削を行う60日前までの届出が求められています

3、違反するとどうなる? 文化財保護法第93条の罰則

以下では、文化財保護法の規定に反して届出をせずに発掘を行った場合に受ける可能性のある罰則について解説します。

  1. (1)文化財保護法第93条には罰則がない

    前述したように、土木工事など発掘調査以外の目的をもって埋蔵文化財包蔵地で発掘を行う際は、60日前までの届出が必要です。
    しかし、実は、この規定には罰則がありません。

    この規定は、主に開発事業者がむやみに発掘・掘削をして貴重な遺跡や埋蔵文化財を破壊しないように定められたものです。
    しかし、文化財保護法が国土開発に力を注いでいた昭和25年に定められた古い法律であり、本格調査の費用を負担しなければならないなど開発事業者側の負担が重いことなどから、罰則が定められていないと考えられています。

  2. (2)埋蔵文化財の調査目的による無届発掘には罰則が設けられている

    埋蔵文化財を調査する目的で発掘する際も、やはり届出が必要です。
    調査目的による無届発掘には、文化財保護法第203条2号の規定によって「5万円以下の過料」が科せられます。

    「過料(かりょう)」とは、行政上の秩序罰です。
    同じく「かりょう」と呼ぶものに「科料」がありますが、どちらも金銭の納付を命じられるという点ではよく似ています。
    ただし、過料が行政罰であるのに対して、科料は刑事罰なので前科がつくという点でまったく別の罰だということに注意してください。

4、発掘行為が問題になった実例

以下では、実際に発掘行為が問題になった事例を解説します。

  1. (1)「宝探し」名目で埋蔵文化財包蔵地を発掘した事例

    まず、動画配信者が「宝探し」と称して史跡内で発掘を行った事例を紹介します。

    この事例では、金属探知機を使用して埋蔵物を探し、スコップを使って発掘する様子が動画配信サイトで公開されたことで大きな話題になりました。
    撮影された史跡は埋蔵文化財包蔵地に該当するため、視聴者からの指摘が相次いだだけでなく、自治体の文化財課が「法令に違反する」と注意を呼び掛ける事態へと発展したのです。

    埋蔵文化財包蔵地における無届の発掘行為は、文化財保護法第93条1項に違反する行為です

    問題となった動画配信者は「土木工事などの開発事業ではなく、スコップで掘る程度なので届出は不要だと思っていた」と弁明したうえで謝罪を行いました。

  2. (2)山中で偶然にも土中に埋もれた土器を発掘した事例

    次に紹介するのは、山中で遊んでいた小学生らが偶然にも土中に埋もれた土器を発掘した事例です。

    木々が生い茂った山中で不自然に置かれた石を発見した小学生らが、違和感からその石をどけたところ、土中に埋もれたつぼを発見しました。
    発見されたのは12世紀ころに作られたつぼで、さらにその後の調査で付近から鉄の刀と和鏡が発掘されたため、当時の有力者が埋葬された墓だったことが判明したのです。

    この事例で小学生らが土器を発掘したのは、埋蔵文化財包蔵地には該当しない場所でした。
    また、同伴していた男性の判断により、それ以上発掘を続けたりつぼを持ち帰ったりせずに埋め戻したうえで、埋蔵文化財センターに連絡がされました。
    この対応は、文化財保護法が定める正しい手続きを順守したものであるため、高く評価されました

5、まとめ

文化財保護法第93条は、埋蔵文化財が存在するエリアでの無届発掘を禁止しています。
無届発掘は、罰則がないとはいえ、違法行為です。
また、出土品を勝手に持ち帰ると刑法の遺失物等横領罪に問われる危険があるため、興味本位に発掘行為をすることは控えましょう。

もし、思いがけず埋蔵文化財を発見してしまった場合は、発見時の状況を変えず、すぐに市町村の教育委員会に連絡してください
また、届出が必要な場所を勝手に発掘してしまったり、出土品を持ち帰ってしまったりしたときは、犯罪に問われることを回避するために、弁護士に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。

文化財保護法の規定に関する疑問や、「違反行為を穏便に解決したい」といったお悩みがある方は、まずはベリーベスト法律事務所にまでご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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