太陽光発電の運用に関するトラブル|法律的な対応を解説

2023年08月21日
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太陽光発電の運用に関するトラブル|法律的な対応を解説

平成24年に太陽光発電で作った電気を固定価格で買い取る制度が始まってから、土地オーナーや太陽光発電業者の新規参入が相次ぎました。熊本県でも、令和4年の時点で太陽光発電機器のある持ち家の割合は全国3位の8.6%であり、多くの人が太陽光発電を利用しています。

しかし、世界文化遺産を目指す阿曾山の草原に約20万枚ものソーラーパネルが設置されていることが「景観を損なう」「世界遺産の登録が難しくなる」と県民から問題視されるという事態も起きています。

太陽光発電システムに関連したトラブルは、全国で起きています。本コラムでは、太陽光発電システムのオーナーが巻き込まれる可能性のあるトラブルとその解決方法について、ベリーベスト法律事務所 熊本オフィスの弁護士が解説します。

1、投資型太陽光発電と自家消費型太陽光発電の違いとは?

太陽光発電の運用には、大きく分けて「投資型太陽光発電」と「自家消費型太陽光発電」の二種類があります
投資型太陽光発電では、発電した電気の全量あるいは余剰分を、電力会社に流して買い取ってもらいます。一方で、自家消費型太陽光発電では、発電した電気のすべてを持ち主自身で消費します。つまり太陽光発電システムにより自前で作った電気を売るか、自分で使うか、という点が両者の違いとなるのです。

2、太陽光発電システム運用上の発生しがちなトラブル

  1. (1)メンテナンス不足によるトラブル

    太陽光発電システムは、精密機械ですそのため、家電や自動車と同じく、定期的なメンテナンスを怠ると経年劣化により発電量の低下や作動停止などの故障が生じてしまいます。最悪の場合には、火災を引き起こして太陽光発電システムが焼失してしまうおそれもあるのです。
    とくに屋外に設置されることが多いパワーコンディショナー(電流を直流から交流に変換する装置)では、雨水の影響や土ぼこりなどによるフィルターの目詰まりによるトラブルが多発しています。

    また、見落とされがちなトラプルとして、鳥のふんを掃除せずに放置しておいたり、草木や雑草を刈らずに放置しておいたりすることによる、発電量の低下があります
    とくに野立ての産業用太陽光発電の場合、草木や雑草が生い茂りやすい夏にそれを放置しておくことで、その影によって発電量が低下してしまうことがあります。

  2. (2)業者によるトラブル

    経験不足の太陽光発電システム業者と契約してしまったことで設置工事にミスがあり、当初想定の発電量が得られないどころか雨漏りや火災が発生してしまう、というトラブルが生じることがあります。
    また、自社の利益のことしか考えない強引な業者と契約してしまったことで、その後のメンテナンスにおいて満足な保証やフォローアップが受けられなくなる、というトラブルも発生しています。

    新規参入組が多い太陽光発電システム業界では、上記のような未熟または悪質な業者と契約してしまったことで、後々の事業が立ち行かなくなるケースが往々にしてあります
    ほかにも、「国や自治体から補助金が出る」ということをセールス文句にして契約させて、実際は業者側で補助金申請をしていなかった、という事例もあります。
    「投資型太陽光発電」と「自家消費型太陽光発電」のどちらの場合であっても、業者のセールスを鵜呑みにせず、太陽光発電システムを設置することによって自分にどのような利益が生じるのかをしっかりと検討する必要があります。

  3. (3)近隣トラブル

    太陽光発電システムによる近隣トラブルでもっとも多いといわれているのは、反射光によるトラブルです
    反射光によるトラブルの例として、パネルに降り注いだ太陽光が反射して、付近の住民がまぶしさのために生活に支障をきたしてしまうことがあります。とくに採光窓は南向きに取り付けられている家が多いため、太陽光パネルが北向きかつ反射光を受ける家の方が太陽光パネルよりも高い場所に立っている場合は、反射光によるトラブルがより発生しやすくなります。

    実際の事例としては、平成24年に、神奈川県で住宅用太陽光パネルの反射光による近隣とのトラブルが、訴訟にまで発展しています。

    また、パワーコンディショナーからは音が出ます。パワーコンディショナーからの音はモスキート音(聴力検査に使われる微弱な音)からエアコンの室外機レベルの音と、機器によって程度の違いはあります。たしかに騒音というレベルの動作音ではないかもしれませんが、それでも、パワーコンディショナーからの音をめぐり近隣とのトラブルが発生する可能性はあります。
    このほか、野立ての太陽光発電システムでは、近隣の家庭の保護者から「子どもが入って危険」という苦情がなされるケースもあります。

  4. (4)自然災害によるトラブル

    台風や津波、地震、大雨、それに伴う土砂崩れのような自然災害によるトラブルも、太陽光発電システムを運用していくうえでは避けて通れません。とくに、山を切り開いて設置している太陽光発電システムでは、土砂崩れをせき止める木々を伐採して設置する場合があるため、太陽光発電システムを設置する行為そのものが土砂崩れを引き起こす原因になるおそれがあるのです。

    地震大国ともいわれる日本では、地震による「売電機会の損失」というトラブルが生じ得ます
    売電機会の損失は、平成30年9月の北海道地震で実例があります。このとき、地震の影響で全域停電(ブラックアウト)が生じたため売電するための送電網が使用不可能となってしまい、結果として売電を行うこと自体が不可能になってしまいました。

3、太陽光発電トラブルを事前に防ぐ方法

  1. (1)メンテナンス不足によるトラブル

    太陽光パネルもパワーコンディショナーも、メーカーの保証期間には期限があります。いずれも買い替えの時期が来るまでは、定期的かつメーカーの補償範囲内でメンテナンスしたうえで、安全に作動するようにしておくことが重要になります。
    また、草木や雑草については防草シートや砂利の設置、定期的な除草剤の散布など対策に加えて、除草作業を請け負う業者との契約も選択肢のひとつになるでしょう。
    仮に、業者と契約しない場合であっても、メンテナンスの基本的な知識については可能な限り勉強しておいた方がいいでしょう

  2. (2)業者によるトラブル

    業者選びが失敗だったとわかったときは、思い切ってその業者と手を切り、別の業者を探すことも一案です。一度設置してしまった太陽光発電システムをしっかりと使えるように修理・リフォームを請け負う業者を探して、相談してみてもよいでしょう。
    ただし、二度と失敗しないためにも、業者選びは慎重に行う必要があります
    太陽光発電システムを設置した実績件数や事例、会社の設立年月日やPV施工技術資格者の人数、すでに設置した太陽光発電システムのメーカーの施工IDを有しているかが、信頼できる業者を確認するためのポイントとなります。また、すでに設置した太陽光発電システムに満足している人が知り合いにいれば、その人から業者を紹介してもらうこともできるでしょう。

    なお、当初契約した業者があまりにも悪質であると判断される場合は、まず国民生活センターにご相談してみることをおすすめします。また、強引な訪問販売により契約してしまった場合には、クーリングオフが認められることもあります。

  3. (3)近隣トラブル

    反射光による近隣トラブルを防ぐ方法としては、「太陽光パネルは北向きの屋根に設置しないこと」と、「住宅街の中に野立ての太陽光発電システムは設置しないこと」が重要になります。
    パワーコンディショナーからの音をめぐっての近隣トラブルは、もともと隣人と仲が悪く、音にかぎらずささいなことで文句をいわれているという方が多いようです。
    したがって、太陽光発電システムを設置するときにエアコンの室外機程度の音が出ることを説明して、納得してもらうことが最善の策となるでしょう

    また、「太陽光発電システムに子どもが入って、危ない」という近隣からの苦情については、子どもが入ることができないようにフェンスや標識を設置しておくしかありません。
    一定規模以上の野立ての太陽光発電システムシステムにはフェンスや標識の設置義務がありますが、野立てであれば規模に関係なくフェンスや標識を設置しておくとよいでしょう。

  4. (4)自然災害によるトラブル

    自然災害によるトラブルのために生じた損失は、太陽光発電メーカーによる出力保証やシステム保証ではカバーされません。したがって、自然災害によるトラブルにより生じた損失の補償を受けるためには、「動産総合保険」への加入が必須となります

    ただし、地震による被害については、動産総合保険でも保証を受けることはできません。
    とはいえ、現在は地震による災害についても個別オプションで保証を受けることができる保険があるため、さまざまな保険会社の商品を調べながら、ご自身の太陽光発電システムが設置されている地域の特性に合わせた保険を選ぶとよいでしょう。

4、太陽光発電トラブルが発生した場合の対処方法は?

先述したように、太陽光発電システム業者の中には悪質な業者も存在します。そして、悪質な業者の被害に遭ったことによりトラブルに巻き込まれてしまい、損失が出てしまった、という事例は多発しているのです。
もしご自身が悪質な業者の被害にあわれた場合や、その他のかたちで太陽光発電に関するトラブルに巻き込まれてしまった場合には、弁護士に相談することをおすすめします

弁護士であれば、代理人として太陽光発電システム業者と交渉して、原状回復や損害賠償の支払いに向けた交渉を行うことができます。
また、近隣トラブルが発生したときにも、代理人としてトラブルの解決に向けた交渉を行うことができます。

5、まとめ

個人による太陽光発電システムは普及してから日が浅く、そのためにトラブルも生じやすくなっております。

もし太陽光発電システムに関連してトラブルに巻き込まれてしまったときは、まずは、ベリーベスト法律事務所にご連絡ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています