どこからが不貞行為? 不倫と浮気の違いや、慰謝料について解説

2021年06月29日
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どこからが不貞行為? 不倫と浮気の違いや、慰謝料について解説

熊本市が公表している人口動態総覧によると、令和元年度の熊本市内の離婚件数は、1321件でした。過去の統計をみると多少増減はあるものの、毎年1300件前後の離婚件数があることがわかります。

夫婦が離婚する原因にはさまざまなものがありますが、配偶者が不倫をしたということも離婚を決断する大きな理由の一つでしょう。配偶者が不倫をしていることを知った方は、離婚だけでなく、不倫をしたことの責任もとってもらいたいと考えると思います。不倫をしたときには、法律上の離婚事由として認められるだけでなく、不倫をした当事者に対して慰謝料を請求することが可能です。

今回は、配偶者が不倫をしていたときの法的責任について、ベリーベスト法律事務所 熊本オフィスの弁護士が解説します。

1、不貞行為(ふていこうい)は離婚事由と認められる

配偶者の不倫について調べていると、「浮気」、「不貞」、「不倫」などといったさまざまな用語によって表現されているため、離婚に関する知識のない方は混乱することもあるでしょう。まずは、配偶者の不倫が法律上どのように扱われるのかについて説明します。

  1. (1)不貞行為(ふていこうい)とは何か

    芸能人の不倫がニュースで話題になっているように、一般的には、配偶者以外の異性と肉体関係を持つことが、「不倫」と呼ばれます。
    このような配偶者以外の異性と肉体関係を持つことは、法律上では「不貞(ふてい)」または「不貞行為(ふていこうい)」と呼んでいます。そのため、不倫と不貞行為とは、基本的に同一の意味であると考えてよいでしょう。以下では、不貞または不貞行為という名称を使って説明していきます。
    なお、「浮気」については、明確な定義があるわけではありません。
    不貞行為のように婚姻関係や内縁関係にない交際中の男女における異性問題だと理解しておけばいいでしょう。

  2. (2)不貞行為をした場合の法的責任

    不貞行為をした場合には、法律上一定の責任が生じます。具体的には、以下のような責任が生じます。

    ① 法律上の離婚事由になる
    民法770条1項1号は、「配偶者に不貞な行為があったとき」を法律上の離婚事由として規定しています。そのため、配偶者が不貞行為をした場合には、法律上離婚を求めること可能になるのです。

    「離婚をするのに理由が必要なの?」と思う方もいるかもしれません。離婚の方法には、話し合いによって離婚をする協議離婚、家庭裁判所の調停によって離婚をする調停離婚、家庭裁判所の裁判によって離婚をする裁判離婚の3種類があります。大多数の夫婦は、話し合いで離婚に合意をして、離婚届を提出するといった協議離婚によって離婚をしています。協議離婚では、お互いが離婚に合意さえできれば、「一緒にいたくない」、「嫌いになった」などどのような理由であっても離婚をすることができます。

    しかし、裁判離婚をするためには、民法が定める一定の理由に該当しなければ、裁判所は離婚を認めてくれません。そのような理由のことを、「離婚事由」といいます。
    協議離婚、調停離婚のいずれについても、最終的には夫婦双方の合意が必要です。したがって、配偶者が離婚に同意してくれないケースでは、最終的には裁判を起こすことになります。配偶者が不貞行為をしたという事情は、法定の離婚事由に該当しますので、配偶者の不貞行為が立証できれば、裁判所が離婚を認めてくれることになるのです。

    ② 慰謝料請求が可能
    不貞行為をした場合には、他方の配偶者が有する婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益を侵害することになりますので、それによって被った精神的苦痛に対しては、不法行為であるとして慰謝料を請求することが可能です。
    不貞行為の慰謝料については、後述するように不貞行為をした配偶者、配偶者の不貞相手のどちらか一方に請求することができますし、双方に請求することもできます。

2、どこからが不貞行為?

不貞行為は配偶者以外の異性と肉体関係を持つことですが、場合によっては、肉体関係を持ったとしても不貞行為とは認められないことがあります。
以下では、どこからが不貞行為に該当するかについて解説いたします。

  1. (1)不貞行為に該当するケース

    不貞行為に該当するケースとしては、以下のものがあります。

    ① 異性との肉体関係
    不貞行為の定義でも説明したとおり、配偶者以外の異性と肉体関係を持つことは当然不貞行為に該当します。肉体関係の回数がたとえ1回であっても不貞行為に該当しますので、慰謝料請求は可能です。

    ② ラブホテルに入ったこと
    不貞行為の直接の証拠を押さえるためには、配偶者が異性と肉体関係を持っている現場を押さえなければなりません。しかし、実際にはなかなか難しいものです。
    実務上は、直接の肉体関係の証拠ではなく、肉体関係があったと推認できる状況であれば、不貞行為を認定してもらえます。たとえば、ラブホテルなどは、男女が性交渉を目的として利用する場所ですので、配偶者が異性とラブホテルに入っていき、長時間一緒に過ごしていたという場合には、不貞行為があったものと推察されます。

  2. (2)不貞行為に該当しないケース

    不貞行為に該当しないケースとしては、以下のものがあります。

    ① 肉体関係がない浮気
    不貞行為の定義が配偶者以外の異性と肉体関係を持つということであるため、肉体関係のない浮気については、不貞行為とは認められません。たとえば、配偶者が異性と食事に行ったり、デートをしたり、キスをしたとしても肉体関係があったとはいえませんので、不貞行為には該当しません。
    ただし、泊りでデートをしたというケースでは、肉体関係があったものと推認され、不貞行為が認められることがありえます。

    ② 婚姻関係破綻後の不貞行為
    配偶者による不貞行為があったとしても、それが婚姻関係破綻後の不貞行為であった場合には、慰謝料請求や離婚請求は認められない可能性があります。

    慰謝料請求をするためには、違法に権利が侵害されたという状況が必要になりますが、婚姻関係が破綻している夫婦では、婚姻共同生活の平和の維持という権利や利益が存在しないため、慰謝料の請求ができません。また、既に婚姻関係が破綻している場合には、不貞行為によって破綻したとはいえませんので、不貞行為自体が離婚事由になることもありません。ただし、このようなケースでは、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)という離婚事由に該当して、離婚が認められる可能性があるのです。

    ③ 強姦による肉体関係
    肉体関係があったとしても、お互いの自由意思に基づかない場合には、不貞行為とは認められません。たとえば、強姦によって無理やり性行為をさせられたという場合には、自由意思による行為とはいえませんので、不貞行為には該当しないのです。

3、慰謝料は誰に請求できる?

配偶者が不貞行為をしたことがわかったときには慰謝料請求を検討することになります。慰謝料請求は誰に対して行えばよいのでしょうか。

  1. (1)不貞行為をした配偶者に請求する場合

    不貞行為をした配偶者に対しては、当然、慰謝料請求をすることができます。不貞行為をした配偶者に慰謝料請求するときには、離婚をする際に慰謝料請求することもできますし、離婚をせずに慰謝料請求だけすることもできます。
    ただし、離婚をしないのであれば、基本的には夫婦の家計は一緒となります。そのため、離婚をせずに慰謝料だけを請求することには、実益があまりないといえるでしょう。

  2. (2)配偶者の不貞相手に請求する場合

    配偶者が不貞行為をしたときには、その不貞相手に対しても慰謝料を請求することができます。配偶者との関係では不貞行為に該当するとしても、不貞相手に故意または過失がないときには、不貞相手に対する請求は認められません。故意または過失がない場合とは、不貞相手が、不貞をした配偶者のことを独身だと思っており、そう思うことに落ち度がないことをいいます。

    不貞相手がこのような反論をしてきた場合には、慰謝料を請求する側が、不貞相手に故意または過失があったことを証明しなければなりません。友人や職場の同僚であれば、婚姻の事実を知っているといえますので証明は容易になりますが、知り合って間もないというケースでは証明するのが難しいこともあります。
    なお、不貞相手に対する請求についても、離婚したかどうかを問わず請求することができます。しかし、離婚をしたかどうかは慰謝料金額を考慮する要素となりますので、離婚していない場合には、離婚した場合に比べて慰謝料額が低くなる傾向にあるのです。

  3. (3)配偶者と不貞相手の双方に請求する場合

    不貞行為があった場合には、配偶者と不貞相手のどちらか一方ではなく双方に対して請求することができます。ただし、二人に請求することによって慰謝料を2倍もらうことができるというわけではないので、注意が必要です。たとえば、慰謝料額として200万円が相当である事案については、配偶者に対して200万円、不貞相手に対して200万円を請求することが可能ですが、両者からは200万円を超えて慰謝料をもらうことができません。そのため、配偶者から200万円の慰謝料を既にもらっている場合には、不貞相手に対しては慰謝料を請求することができなくなるのです。

    また、不貞行為は配偶者と不貞相手とが共同で行うものですので、両方に慰謝料を請求できるときには、それぞれが負担するのが公平です(半分ずつ負担するのが通常です)。そこで、不貞相手が自己の負担部分を超える慰謝料を支払ったときは、不貞相手は配偶者に対して負担部分の支払いをするよう請求(求償)することができます。もっとも、配偶者と離婚していない場合には、不貞相手の負担部分のみを前提として金額を決定し、不貞相手から配偶者への求償権は放棄するという形で1回で解決できるように話が進められることがよくあります。

4、離婚を考えたときに準備しておくべきこと

配偶者が不貞行為をしていることを知って、離婚しようと考えている方は、いきなり離婚を切り出すのではなく、以下のような準備をしておくとよいでしょう。

  1. (1)不貞の証拠が重要

    配偶者が不貞行為をしたことを認めているのであれば、特に証拠はいりません。しかし、配偶者が不貞行為をしたことを認めていない場合には、慰謝料や離婚を請求する側で、配偶者の不貞行為を証明しなければならないのです
    不貞行為の証拠としては、以下のものが証拠になります。

    • メールやLINEの履歴
    • お互いの裸の画像や不貞行為中の動画
    • 音声データ
    • 探偵の調査報告書


    十分な証拠がない状態で離婚を切り出してしまうと、証拠を隠滅されるリスクがありますので、不貞を疑ったときには証拠の収集を十分に行いましょう

  2. (2)配偶者の財産の調査

    離婚にあたっては、夫婦が築いた財産を分けるという財産分与を求めることができます。財産分与を適切にするにあたっては、お互いの財産を正確に把握していないといけません。婚姻中に相手の財産をすべて把握しているという場合には不要ですが、配偶者がどこの金融機関に口座があるのか、株や投資信託をやっているのかについて把握していない方は、離婚を切り出す前に調べておいたほうがよいでしょう。

  3. (3)別居の準備

    離婚をすることになったら、夫婦は別々に生活することになりますので、どちらか一方または双方が今住んでいる自宅から出ていくことになります。
    離婚を切り出して、いきなり自宅を追い出されてしまうと生活することができませんので、離婚を決断したときには、転居先をある程度確保しておくようにしましょう。また、専業主婦で収入がない方は、離婚後の収入確保のために職探しも併せて行うとよいでしょう。

5、まとめ

配偶者が不倫をしていたときには、離婚の請求だけでなく慰謝料の請求をすることで制裁を与えることができます。ただし、離婚や慰謝料の請求にあたっては不貞行為を裏付ける証拠の有無が重要となってきます。配偶者の不貞を疑っている方は、今ある証拠で十分かどうかや今後の離婚手続きについて専門家である弁護士に相談をすることで、有利にすすめることが可能になります

配偶者の不貞行為で離婚や慰謝料請求をお考えの方は、ベリーベスト法律事務所 熊本オフィスまで、お気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています