モラハラ理由での離婚の進め方|慰謝料請求できる条件とは
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熊本県が公表している令和4年人口動態調査の概要によると、令和4年の熊本県内に離婚件数は2482件、離婚率は1.46でした。また、熊本市内の離婚件数1114件、離婚率1.51と比較すると、熊本市内の離婚率は、県全体でも高い割合であることがわかります。
夫婦が離婚する理由の一つに「モラハラ」があります。モラハラとは、モラルハラスメントの略称で、暴言、侮辱、嫌がらせなどの精神的な攻撃を指す言葉です。このようなモラハラがあった場合、モラハラを理由に離婚することはできるのでしょうか。また、離婚できるとしても慰謝料を請求することはできるのでしょうか。
今回は、モラハラを理由とする離婚の進め方と慰謝料請求できる条件について、ベリーベスト法律事務所 熊本オフィスの弁護士が解説します。


1、モラハラを理由に離婚を進める手順
モラハラを理由に離婚をする際には、以下のような手順で進めていきます。
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(1)協議離婚
協議離婚とは、夫婦の話し合いにより離婚をする方法です。
離婚する夫婦の多くがこの協議離婚により離婚しており、もっとも一般的な離婚の方法といえるでしょう。
モラハラを理由に離婚する場合でも、まずは夫婦の話し合いによる離婚を目指すことになります。
ただし、モラハラが日常的に行われている状況だと、離婚を切り出したとしても、暴言を吐かれたり、高圧的な態度をとられたりするなど対等に話し合いを進められないケースも少なくありません。
また、モラハラをする相手は、常に自分が正しいと信じ込んでいるケースが多く、離婚を切り出したとしても、頑なに離婚に応じてくれない場合もあります。
そのため、話し合いによる離婚が難しいと感じたときは、次の調停離婚の手続きに移ることになります。 -
(2)調停離婚
調停離婚とは、家庭裁判所の調停手続きにより離婚の成立を目指す方法です。話し合いで離婚の合意に至らないときは、家庭裁判所に離婚調停の申立てをすることになります。
離婚調停では、裁判官や調停委員を交えて離婚に向けた話し合いが行われるため、当事者同士が顔を合わせる必要はありません。また、モラハラをする相手は、外では優しい夫(妻)を演じていることがあり、普段は高圧的な態度をとる夫であっても、調停委員がいれば対等な立場で冷静に話し合いができる可能性もあります。
ただし、離婚調停も基本的には話し合いの手続きであるため、相手が離婚に同意してくれない場合には調停不成立となってしまいます。そのようなときは、次の裁判離婚の手続きに移ります。 -
(3)裁判離婚
裁判離婚とは、裁判所に離婚の可否や条件を判断してもらう方法です。相手が離婚に反対している場合でも、裁判所が離婚は相当だと認めれば離婚できる可能性があります。
裁判離婚をするには、以下の5つの法定離婚事由のうちいずれかが必要になります。- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 配偶者の生死が3年以上明らかでない
- 配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
モラハラを理由に離婚する場合、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があるため、裁判では、これに該当することを証拠に基づき主張立証する必要があります。
2、モラハラ夫や妻に慰謝料請求できる条件
モラハラを理由に離婚する場合、配偶者に対して、慰謝料請求をすることができるのでしょうか。
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(1)モラハラで慰謝料請求するのは難しい
モラハラを理由とする慰謝料請求は、以下の理由から一般的には難しいとされています。
① モラハラがあったことを客観的に立証しにくい
モラハラを理由に慰謝料請求をする場合、モラハラ被害者がモラハラ被害にあったことを証拠に基づき立証していかなければなりません。
身体的な暴力であるDVであれば、怪我などによりDVがあったことを立証することができますが、精神的な暴力であるモラハラは客観的な証拠が残りにくく、被害状況を客観的に立証することが困難なケースが多いです。
そのため、慰謝料請求をしたくても、証拠がないため請求できないというケースも少なくありません。
② 加害者自身にモラハラの認識がない
違法なモラハラが行われていても、モラハラを行っている本人は、自分がモラハラを行っているという認識がありません。
DVや不貞行為であれば自分が悪いことをしているという認識があるため、慰謝料請求に応じてくれる可能性もあります。
しかし、モラハラの事案では「自分は悪くない」と信じているケースが多く、簡単には慰謝料の支払いには応じてくれません。 -
(2)モラハラで慰謝料請求できるケース
以下のようなケースであればモラハラを理由として慰謝料請求ができる可能性があります。
① モラハラを立証できる十分な証拠があるケース
モラハラを理由とする慰謝料請求が難しいとされているのは、モラハラがあったという証拠を確保するのが難しいからです。
しかし、モラハラを立証できる十分な証拠があるのであれば、慰謝料請求することは可能です。モラハラの証拠になるものや集め方については、3章で詳しく説明します。
② 相手が慰謝料の支払いに応じてくれるケース
裁判になれば、モラハラ被害者が証拠に基づいてモラハラを立証していかなければならず、モラハラの立証ができなければ、慰謝料を支払ってもらうことはできません。
しかし、モラハラの慰謝料請求は、裁判外の交渉で行うこともできます。交渉であれば裁判のような厳格な証明は必要ないため、十分な証拠がなかったとしても、相手が慰謝料の支払いに応じてくれる可能性があります。 -
(3)モラハラを理由とする慰謝料の相場
一般的な慰謝料相場は50万~300万円程度です。
ただし、モラハラを理由とする慰謝料の金額は法律上の明確な定めはなく、さまざまな要素を考慮して判断するため、事案によって金額は変わります。
3、被害を受けた証拠の集め方
モラハラを理由に離婚および慰謝料請求をする場合には、モラハラの証拠を確保する必要があります。以下では、モラハラを立証するための証拠となるものと、その集め方を紹介します。
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(1)医師の診断書や診療記録
モラハラにより心身に不調をきたして心療内科や精神科を受診したときは、医師の診断書や診療記録がモラハラを立証する証拠になります。
診療内科や精神科を受診する際には、医師に対して、心身に不調をきたした経緯や理由などを詳しく話すことが大切です。
医師の診断書は主治医に作成を依頼することで入手でき、診療記録は病院の窓口で開示請求をすれば入手できます。 -
(2)モラハラの状況の録音・録画
モラハラが行われている状況を録音・録画したものがあれば、モラハラを立証する有力な証拠になります。
録音・録画をしていることが相手にバレてしまうと、逆上してモラハラがさらにエスカレートする可能性があるため、相手にバレないように行うのがポイントです。 -
(3)モラハラの内容が含まれるメールやLINE
モラハラ夫(妻)から送られてきたメールやLINEに、侮辱や人格の否定、脅迫するような内容が含まれている場合には、メールやLINEもモラハラを立証する証拠として利用できます。
メールやLINEなどのデータは、失われてしまう可能性も高いため、しっかりとバックアップを取っておくことが大切です。 -
(4)警察や相談機関への相談記録
警察や市区町村役場の相談窓口でモラハラの相談をしたことがある方は、警察や相談機関が保管する相談記録もモラハラの証拠として利用できます。公的機関が作成する書類えあるため、証明力の高い証拠となるでしょう。
これらの相談記録は、相談先の機関に対して開示請求をすることで入手できます。 -
(5)モラハラ被害をまとめた日記
モラハラ被害にあった内容や状況を書き記した日記もモラハラの証拠になります。
被害者本人が作成した日記であることから他の証拠に比べて証明力は低くなるものの、他の証拠と組み合わせることでモラハラを立証できる可能性が高くなります。
そのため、「いつ・どこで・どのような状況で・何をされたのか」を具体的に記載しておくようにしましょう。
4、離婚を検討する時点で弁護士に相談すべきケース
以下のようなケースに該当する方は、離婚を検討する時点で弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)相手との話し合いが困難なケース
モラハラを理由に離婚をするケースでは、離婚を切り出しても簡単には離婚に応じてもらえず、モラハラがさらにエスカレートする可能性があります。
自分だけで対応するのが不安に感じるときは、離婚を切り出す前にまずは弁護士に相談するとよいでしょう。弁護士に依頼すれば、弁護士が代理人として相手との交渉を行うため、負担なく離婚手続きを進めることができます。 -
(2)モラハラを理由とする慰謝料請求を考えているケース
モラハラを理由とする慰謝料請求は難しいものの、事前に弁護士に相談して、証拠の集め方などについてアドバイスを受ければ、モラハラの立証に必要となる十分な証拠を確保できる可能性が高くなります。
証拠があれば慰謝料請求できる可能性が高くなるため、まずは弁護士に相談するとよいでしょう。
お問い合わせください。
5、まとめ
モラハラを理由に慰謝料請求できる条件としては、モラハラの証拠があることが挙げられます。証拠の有無によって今後の離婚の進め方の難易度が大きく変わるため、まずはしっかりと証拠を確保することが重要です。
そのためには、相手に離婚を切り出す前から弁護士に相談して準備を進めていく必要があります。まずはベリーベスト法律事務所 熊本オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています