交通事故を起こしたら逮捕される? 重い処分を回避するための方法を解説
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熊本県警察のデータによると、令和2年8月末までに熊本県内で発生した交通事故の件数は2047件、死亡者数は24名です。
前年同時期までのデータと比較すると、件数は24.5%の減少、死亡者数は33.3%の減少となっています。コロナ禍により外出する人の数が減ったことから、令和2年では全国的に交通事故の件数が減っている傾向にあります。
交通事故で相手を負傷させたり、死亡させたりした場合には、逮捕・起訴されて刑事処分を受けてしまう可能性があります。
重い刑事処分を回避するためには、速やかに弁護士に連絡して、早期の段階から対応を行うことが重要になるのです。
本コラムでは、交通事故の加害者に成立する罪や逮捕後の流れ、重い刑事処分を回避するためにできることなどについて、ベリーベスト法律事務所 熊本オフィスの弁護士が解説します。
(出典:「交通事故情報(令和2年8月末)」(熊本県警察))
1、交通事故の加害者が問われる可能性のある罪と刑罰
交通事故の加害者は、事故の態様や悪質性などによっては、重い刑事処分を受けてしまう可能性があります。
交通事故の加害者について成立する可能性がある罪と刑罰について、解説いたします。
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(1)過失運転致死傷罪
自動車の運転中に誤って事故を起こして、相手を死傷させてしまった場合には、「過失運転致死傷罪」が成立します(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転処罰法)第5条)。
過失運転致死傷罪の法定刑は、「7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金」です。
なお、アルコールや薬物の影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で事故を起こし、他人を死傷させた場合において、アルコールや薬物の影響の有無や程度が発覚することを免れようとした場合には、「12年以下の懲役」というさらに重い刑罰に処されます(同法第4条)。 -
(2)危険運転致死傷罪
アルコールや薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる、異常な高速度で自動車を走行させる、あおり運転行為をするなど、故意ともとられるような非常に危険な方法で自動車を走行させ、他人を死傷させた場合には、「危険運転致死傷罪」が成立します(自動車運転処罰法第2条)。
その罰則はきわめて重く、他人を負傷させた場合には「15年以下の懲役」、死亡させた場合には「1年以上の有期懲役」となるのです。 -
(3)救護義務違反
交通事故で他人を負傷させた場合には、負傷者を救護して、道路における危険を防止するなどの必要な措置を講じなければならないものとされています(道路交通法第72条第1項前段)。
上記の救護義務等に違反した場合、加害者である運転者には、「10年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科されます(同法第117条第2項)。 -
(4)警察への報告義務違反
交通事故が起こった場合、当事者は必ず警察に通報して、事故の内容について報告をしなければなりません(道路交通法第72条第1項後段)。
この報告義務を怠った場合、「3か月以下の懲役または5万円以下の罰金」に処されます(同法第119条第1項第10号)。 -
(5)酒酔い運転・酒気帯び運転
負傷者や死亡者の有無にかかわらず、飲酒運転は違法行為です。
飲酒運転は「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」に分かれており、それぞれについて道路交通法において罰則が設けられています。
酒酔い運転とは、飲酒量にかかわらず、酒に酔った状態で車を運転する行為を指します。
酒酔い運転をした者には、「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科されます(道路交通法第117条の2第1号)。
酒気帯び運転とは、呼気中のアルコール濃度が1リットル当たり0.15mg以上の状態で車を運転する行為をいいます。
酒気帯び運転をした者には、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科されます(同法第117条の2の2第3号)。
2、交通事故が原因で逮捕される可能性は?
交通事故を起こした加害者は、警察に逮捕される可能性があります。
ただし、事故を起こしたから必ず逮捕されるという訳ではありません。逮捕は、逮捕の要件を満たしたうえで、捜査機関(警察・検察)が「逮捕する必要がある」と判断した場合に行われるのです。
逮捕の概要や要件、交通事故で実際に逮捕が行われる可能性について解説いたします。
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(1)逮捕の概要
「逮捕」とは、捜査機関が犯罪についての捜査を行う間、被疑者による罪証隠滅や逃亡を防止するために、被疑者の身柄を拘束する強制処分です。
捜査機関が逮捕を行うためには、裁判官が発行する逮捕令状を必要とすることが原則とされます(刑事訴訟法第199条第1項)。
ただし、加害者が現行犯である場合には、例外的に、令状なしでの逮捕が行えることになっています(同法第213条)。
交通事故の場合、現行犯であることが大半なので、令状なしでも逮捕される可能性があるのです。 -
(2)逮捕の要件
逮捕が認められるための要件には、「逮捕の理由」と「必要性」の二つが存在します。
●逮捕の理由
「逮捕の理由」とは、具体的には「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(刑事訴訟法第199条第1項)を意味しています。
被疑者が一定以上の高い確率で罪を犯したと客観的に判断される場合に、はじめて、捜査機関は逮捕を行うことが可能となるのです。
●逮捕の必要性
逮捕による身柄拘束は、「被疑者による罪証隠滅や逃亡を防ぐこと」を目的としなければいけません。
そのため、被疑者が逃亡するおそれがなく、罪証を隠滅するおそれもない場合には、逮捕が認められないことになっているのです(刑事訴訟規則第143条の3参照)。 -
(3)交通事故で逮捕される可能性
交通事故で実際に逮捕されるかどうかは、事故の態様や悪質性、さらには加害者が置かれている状況などによって、個別具体的な状況によって異なります。
被害者の負ったケガが軽傷である場合には、加害者が逮捕される可能性はそれほど高くないでしょう。
しかし、危険運転致死傷罪に該当する場合や、被害者が死亡してしまった場合には、重い刑事処分が予想されるため、加害者が逮捕される可能性も高まるのです。
また、加害者が単身であるか世帯持ちであるか、あるいは定職に就いているかどうか、などの個人的な事情は、逃亡の可能性に関わります。そのため、これらの事情も、逮捕の要否の判断に影響する場合があるのです。
3、交通事故の加害者への処罰が確定するまでの流れ
交通事故の加害者に対する刑事処分が確定するまでの流れについて、解説いたします。
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(1)逮捕・勾留、または在宅捜査
交通事故が発生すると、捜査機関は加害者に対する捜査を開始します。
捜査は、逮捕・勾留による身柄拘束のうえで行われる場合もあれば、被疑者在宅のまま行われる場合もあります。
身柄拘束がある場合には、逮捕・勾留を含めて最大23日間の身柄拘束期間中に、検察官が起訴・不起訴を決定することになります。
一方身柄拘束がない場合は、このような期間制限はありません。そのため、捜査が熟したタイミングで、適宜起訴・不起訴の判断が行われることになるのです。 -
(2)起訴(公訴提起)
被疑者を起訴するかどうかは、検察官が単独の判断により決定します(刑事訴訟法第247条)。
被疑者の情状によっては、たとえ罪を犯した事実が認められるとしても、検察官が起訴を差し控える可能性があります(起訴猶予)。
そのため、被疑者にとっては、できる限り不起訴処分が得られる可能性を高めるために、示談などの情状に関する活動が重要になるのです。 -
(3)公判・判決
被疑者が検察官により起訴された場合には、法廷の場で、犯罪事実の有無と量刑が争われることになります。
被疑者の側としては、検察官が主張する公訴事実を認めるか否認するかの方針を事前に立てたうえで、反論に用いる主張や証拠を準備する必要があります。
そして、裁判官が心証の形成を完了した時点で審理は終結して、判決が言い渡されるのです。 -
(4)控訴・上告
判決の内容に不服がある場合には、判決の言渡日の翌日から数えて14日以内に、高等裁判所等上級審での審理を求めて控訴をすることができます。
また、控訴審での判決に不服がある場合は、さらに最高裁判所等に対して上告をすることも可能です。
ただし、上告が受理されるのは、判決に憲法違反や判例違反の可能性がある場合などに限られます。 -
(5)判決の確定・刑の執行
言い渡された判決に対して、上訴期間中に控訴・上告が行われなかった場合や、上告が不受理となった場合、または上告審の判決が言い渡された場合には、判決が確定して刑が執行されることになります。
4、交通事故を起こした場合にはすぐに弁護士に相談すべき理由
交通事故の加害者となってしまった場合には、重い刑事処分を避けるためにも、すぐに弁護士に相談するべきです。
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(1)身柄解放に向けて尽力してくれる
弁護士は、被疑者が起訴される前に被害者と示談を行うなど、不起訴処分を得るための弁護活動を逮捕直後から行います。
特に被疑者が逮捕・勾留されているケースでは、身柄拘束が長引けば長引くほど、肉体的
にも精神的にも消耗してしまうものです。
自身やご家族が逮捕された場合には、速やかに弁護士に相談することが、身柄解放を一日でも早くする近道となるのです。 -
(2)公判準備も計画的に行える
万が一起訴されてしまった場合には、早期の段階から公判に向けた準備を行う必要があります。
後半の方針について被疑者と弁護士の間で早くから決めて、入念に準備することで、充実した弁護活動が可能となるのです。
そのため、弁護士に依頼したタイミングが早いほど、後半で不利な結果になる可能性を減らすことができるでしょう。
5、まとめ
交通事故の加害者になってしまった場合、事故の態様や悪質性の程度などによっては、逮捕・起訴のうえで刑事罰を科されてしまう可能性があります。
重い刑事処分を回避するためには、できるだけ速やかに、弁護士に連絡することが重要になるのです。
ベリーベスト法律事務所 熊本オフィスの弁護士は、交通事故の当事者となられた方のために、万全のサポートをいたします。
熊本県や近隣県で交通事故を起こしてしまった方は、まずはベリーベスト法律事務所 熊本オフィスにまでご連絡ください。
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