親の持ち家を相続したいが、揉めている…。持ち家相続のトラブル解決法は?

2023年06月13日
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親の持ち家を相続したいが、揉めている…。持ち家相続のトラブル解決法は?

熊本県が公表している統計資料によると、令和3年の持ち家世帯の比率は63・1%、一戸建ての持ち家世帯の比率は58・5%でした。

遺産の中に親の持ち家が含まれている場合には、持ち家の遺産分割方法をめぐってトラブルが生じる可能性があります。持ち家のような不動産は、現金のように分割することが難しいため、相続する方法についてしっかりと理解したうえで手続きを進めていくことが大切です。

本コラムでは、持ち家相続のトラブル解決法について、ベリーベスト法律事務所 熊本オフィスの弁護士が解説します。

1、相続で持ち家はどうなる?

遺産相続にて、不動産である持ち家は、お金のように単純に分割することができません。
そのため、「換価分割」「代償分割」「共有分割」などの手続きを経たうえで、相続することになります。

  1. (1)換価分割

    換価分割とは、持ち家を売却して得られた売却代金を相続人で分ける方法です

    換価分割では、売却後の現金を分けることになりますので、各相続人の相続分に応じて均等に分けられることがメリットです。
    一方で、持ち家の状態や立地条件などによっては、すぐに売却することができないことや希望する金額で売却することができないことがデメリットになります。
    相続人に持ち家の取得を希望する人がいない場合には、換価分割を選択することになります。

  2. (2)代償分割

    代償分割とは、相続人のうちのひとりが持ち家を取得して、その代償として自分の財産から他の相続人にお金を支払う方法です

    代償分割では、持ち家を売却する必要がありませんので、持ち家に住んでいた相続人は持ち家を取得することによって、引き続き持ち家に居住することができます。
    しかし、持ち家の評価額によっては、他の相続人に支払う代償金が高額になることもあるため、代償金を支払うだけの金銭的な余裕がなければ、選択することができません。
    また、代償分割では、持ち家の評価額や評価方法をめぐって相続人同士で争いになる可能性もあります。

  3. (3)共有分割

    共有分割とは、持ち家を相続人の単独所有にするのではなく、法定相続分に応じた共有状態にして相続する方法です

    被相続人の死亡によって、被相続人の相続財産は相続人による共有状態になるため、法定相続分に応じた公平な分割を行うことができるというメリットがあります。
    また、持ち家が収益不動産である場合には、持ち家から得られる家賃収入についても相続人の法定相続分に応じて平等に分けることができる、というメリットもあります。
    しかし、共有分割には、後述するような大きなデメリットが存在します。
    そのため、特別な事情がない限りは、持ち家を共有するのは避けた方がよいでしょう。

2、共有のデメリット

以下では、共有分割によって持ち家を共有にすることのデメリットを解説します。

  1. (1)持ち家の利活用が困難になる

    持ち家を単独で所有していれば、持ち家の所有者が持ち家の処分(売却、賃貸、担保設定など)を自由に決めることができます。
    しかし、持ち家を共有にしていると、持ち家の売却や建て替え、抵当権などの担保設定などをする場合に、共有者全員の同意が必要になってきます。
    また、持ち家を賃貸に出す場合にも、共有持分の過半数の同意が必要になります。

    共有者が遠方に住んでいて話し合いができない場合や、共有者同士で意見の対立があり考えがまとまらない場合には、持ち家を財産として利用・活用することが困難な状態になるというデメリットがあります
    将来的に持ち家を利用・活用することを考えている場合には、遺産相続の時点で、共有状態を解消すべきでしょう。

  2. (2)世代交代で権利関係が複雑になる

    持ち家を共有状態のままにしておくことには、「世代交代によって、権利関係が複雑になる」というデメリットもあります。
    たとえば、当初は、A、B、Cの3人の共有であったとしても、Aが死亡し、Aの子ども4人が相続し、Bが死亡しBの子ども3人が相続し、Cが死亡しCの子ども2人が相続したとすると、9人の共有状態となってしまいます。
    さらに次の世代の相続が開始すれば、権利関係はますます複雑になってしまいます。

    権利関係が複雑になればなるほど、共有状態を解消することは難しくなります
    そのため、共有状態は早めに解消すべきです。

  3. (3)持ち家の管理費用の負担でトラブルになる

    持ち家がある場合には、持ち家の修繕、庭木の手入れ、固定資産税の支払いなどの負担が生じてきます。
    単独所有であれば自らの負担で行えばよいですが、共有の場合には、共有者全員で話し合いを行って「誰がどれだけ負担をするのか」ということを決めていかなければなりません。
    また、共有者のひとりが金銭的な負担を拒否した場合には、その分を他の共有者が管理費用を負担することになります。
    このような事態になれば、共有者に不公平感が生じてしまい、共有者同士でトラブルが生じる可能性も高くなるでしょう

3、相続で揉めた場合の法的解決法とは

相続で揉めた場合には、以下のような方法で解決することが可能です。

  1. (1)弁護士を入れて協議

    持ち家が相続財産に含まれている場合には、現金のように均等に分けることができないため、遺産分割方法などをめぐってトラブルになる可能性があります

    相続人同士の話し合いでは、感情的になってしまったり意見の対立が生じてしまったりして、解決が難しくなることが多々あります。
    しかし、弁護士であれば、専門的かつ客観的な視点に基づきながら、持ち家の分割方法について各相続人の希望をふまえたうえで最適な方法を提案することができます。
    また、各相続人に対して弁護士がしっかりと説明することによって、それまで反対していた相続人からも納得が得られやすくなるでしょう。

  2. (2)遺産分割調停

    相続人同士の話し合いで解決することができない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てを行うことになります

    遺産分割調停では、家庭裁判所の調停委員が相続人の間に入って、各相続人の意向を聴取したり、解決案を提示したりしてくれます。
    遺産分割協議に参加しない非協力的な相続人がいる場合や、自己の主張に固執して他の相続人の意見を聞き入れない相続人がいるような場合には、遺産分割調停を利用することによって解決できる可能性があります。
    遺産分割調停において相続人全員の合意が得られた場合には「調停成立」となり、その内容が調停調書にまとめられます。

  3. (3)遺産分割審判

    遺産分割調停も、遺産分割協議と同様に基本的には話し合いの手続きであるため、一部の相続人の同意が得られないような場合には、遺産分割調停は不成立となります
    その場合には、自動的に遺産分割審判という手続きに移行します。

    審判は、協議や調停とは異なり、裁判官が相続人の主張や提出された証拠に基づいて、適当と考えられる分割方法を決定する手続きです。
    審判になれば必ず結論が出るというメリットがありますが、調停のような柔軟な解決はできず、法定相続分に従った分割が基本となります。

  4. (4)訴訟提起

    相続人の地位や範囲、遺産の範囲、遺言の有効性などに争いがある場合には、遺産分割調停ではなく、遺産分割に関する訴訟を提起することが必要になる可能性もあります
    相続人の範囲や遺言の有効性などは遺産分割の前提となる事項であるため、遺産分割をする前に結論を出しておかなければ、遺産分割を進行することもできません。

    このような遺産分割に関する訴訟は、非常に専門的な手続きになります。
    そのため、専門家である弁護士によるサポートが不可欠です。

4、相続問題で揉めそうなら、早めに弁護士に相談を

相続問題で揉める可能性がある場合には、早めに弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)冷静に話し合いを進めることができる

    相続人同士の話し合いでは、意見の食い違いや相続財産への思い入れなどによって、感情的な対立に発展してしまうことがあります。

    そのような場合にも、第三者である弁護士を間に入れることによって、感情的な衝突を防ぐことができ、冷静な話し合いを進めることができます

  2. (2)法的観点から公正な遺産分割を実現できる

    遺産分割の場面では、各相続人の法定相続分だけではなく、生前贈与を受けている相続人がいる場合には特別受益を、被相続人の財産の維持・増加に貢献をした相続人がいる場合には寄与分を検討する必要があります。
    また、相続人に配偶者が含まれる場合には、配偶者居住権が主張される可能性もあります。

    弁護士に遺産分割を依頼すれば、特別受益や寄与分、配偶者居住権なども考慮したうえで、公正な遺産分割の方法を提案することができます

  3. (3)調停、審判、訴訟などの法的対応も任せることができる

    相続人同士の話し合いによる解決ができない場合には、遺産分割調停や審判の手続きが必要になります。
    また、遺産分割の前提問題に争いがある場合には、訴訟提起が必要になります。

    このような法的対応が必要になった場合でも、弁護士に依頼すれば、すべて代行させることができます

5、まとめ

持ち家が相続財産に含まれる場合には、相続人同士の意見の対立が生じやすくなるため、早めに弁護士に相談をすることが大切です。
ベリーベスト法律事務所には、弁護士だけでなく税理士や司法書士も在籍しています。
そのため、相続税申告、小規模宅地等の特例の利用や相続登記が必要になった場合にも、ワンストップサービスで対応することができます。

相続問題でお困りの方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています