勝手植えは違法行為! 指摘されたときにとるべき対応。
- 一般民事
- 勝手植え
公園や公道の植え込みに植物(野菜・草花の苗株など)を勝手に植える、いわゆる「勝手植え」は、都市公園法に反する違法行為であり、罰則を受ける可能性があります。公園に植物を植える際には、必ず、利用許可を申請して認められてからにしましょう。
本コラムでは、「勝手植え」などの都市公園法上の違法行為の種類や罰則、利用許可の申請や不服申し立ての方法について、ベリーベスト法律事務所 熊本オフィスの弁護士が解説します。
1、「勝手植え」は都市公園法違反の違法行為
公園や公道の緑地に無許可で植物を植えて、勝手に菜園や庭園などを造る行為(勝手植え)は、都市公園法によって禁止されています。
-
(1)都市公園法の目的
都市公園法は、都市公園の設置・管理に関する基準等を定めて、都市公園の健全な発達を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とした法律です(同法第1条)。
「都市公園」とは、具体的には以下のような公園または緑地をいいます(同法第2条)。- ① 都市計画施設である公園または緑地で、地方公共団体が設置するもの
- ② 地方公共団体が、都市計画地域内において設置する公園または緑地
- ③ 次の公園または緑地で、国が設置するもの
(a)一の都府県の区域を超えるような広域の見地から設置する都市計画施設である公園または緑地((b)にあたるものを除く)
(b)国家的な記念事業として、または我が国固有の優れた文化的資産の保存・活用を図るため、閣議の決定を経て設置する都市計画施設である公園または緑地
街中の公園や公道の緑地は、都市計画施設であるか、または都市計画地域内において設定されたものであれば「都市公園」に該当します。
-
(2)植物を植える際には許可が必要|無許可での植樹は犯罪
公園施設以外の工作物その他の物件・施設を設けて都市公園を占用しようとするときには、公園管理者の許可を受けなければなりません(都市公園法第6条第1項)。
都市公園に植物を植えることは、都市公園の当該箇所を占用する行為にあたります。
したがって、公園管理者の許可を受けなければなりません
無許可で都市公園に植物を植えた場合には、都市公園法違反となります。
2、都市公園法に基づくその他の禁止行為
都市公園法では、勝手植えをはじめとする無断占用行為に加えて、以下の行為が禁止されています(都市公園法第11条、都市公園法施行令第18条)。
- ① 都市公園を損傷し、または汚損すること
- ② 竹木を伐採し、または植物を採取すること
- ③ 土石、竹木等の物件を堆積すること
- ④ 土石の採取その他の土地の形質の変更をすること
- ⑤ 動物を捕獲し、または殺傷すること
- ⑥ 公園管理者が指定した場所以外の場所でたき火をすること
- ⑦ 公園管理者が指定した立入禁止区域内に立ち入ること
- ⑧ 公園管理者が指定した場所以外の場所に車両を乗り入れること
- ⑨ はり紙、はり札その他の広告物を表示すること
3、都市公園条例にも要注意
各都道府県では、都市公園法とは別に「都市公園条例」を定めています。
都市公園の利用にあたっては、各都道府県の都市公園条例も順守しなければなりません。
たとえば、熊本県の都市公園条例では、都市公園における以下の行為が許可制とされています(同条例第2条)。
- ① 行商、募金、署名運動その他これらに類する行為をすること
- ② 業として写真を撮影し、または業として映画もしくはテレビの撮影その他これらに類する行為をすること
- ③ 興行を行うこと
- ④ 展示会、集会その他これらに類する催しを行うこと
- ⑤ 規則で定める都市公園に広告物(大型映像装置による広告を含む)を表示すること
都市公園を利用する際には、その都市公園が所在する都道府県の都市公園条例を確認しておきましょう。
4、都市公園法違反等で逮捕されたらどうなる?
「勝手植え」など、都市公園法に違反する行為や各都道府県の都市公園条例に違反する行為は、犯罪に問われる可能性があります。
-
(1)都市公園法・都市公園条例違反の罰則
「勝手植え」などにより、都市公園を無許可で占用した者に対しては「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科されます(都市公園法第40条第2号)。
また、代表者・代理人・使用人その他の従業者が本人の業務に関して都市公園を無許可で占用した場合には、本人にも「30万円以下の罰金」が科されます(同法第41条)。本人が直接「勝手植え」を行わなかったとしても、他人が本人の指示に基づいて「勝手植え」などを行った場合には本人にも罰則があるということです。
その他にも、都市公園法で禁止されている行為(都市公園の損傷、汚損など)をした場合には「10万円以下の過料」に処される可能性があります。
都市公園条例違反に対する罰則は、都道府県によって異なります。
たとえば、熊本県都市公園条例では、許可制とされている行為を無許可で行った者に「5万円以下の過料」を科すものとしています(同条例第22条第1号)。
また、代表者・代理人・使用人その他の従業者が、本人の業務に関して上記の行為を無許可で行った場合には、本人にも「5万円以下の過料」が科されます(同条例第24条)。 -
(2)都市公園法違反で逮捕された場合の刑事手続き
都市公園法違反の罰則はそれほど重いものではありませんが、情状が悪質な場合には逮捕される可能性もあります。
もし家族が都市公園法違反で逮捕されてしまったら、速やかに弁護士へご相談ください。
都市公園法違反で逮捕された場合の刑事手続きは、以下のような流れで進行します。① 逮捕~勾留請求
逮捕による身柄拘束は、最長で72時間続きます。その間は警察官や検察官による取り調べが行われますが、被疑者は黙秘することも可能です。
逮捕期間が満了するまでの間に、検察官は身柄拘束を延長するため、勾留請求を行うべきか否かを判断します。
都市公園法違反は比較的軽微な犯罪であるため、勾留請求が行われない可能性もあります。
② 起訴前勾留
検察官によって勾留請求が行われた場合、裁判官が勾留の要否を判断します。
罪証隠滅や逃亡のおそれがあるなど、勾留の要件を満たすと判断した場合、裁判官は勾留状を発します。
勾留状が発せられた場合、被疑者はさらに10日間、延長によって最長20日間の「起訴前勾留」を受けることになります。
逮捕と通算すると、起訴前の身柄拘束期間は最長23日間にわたります。
③ 正式起訴・略式起訴・不起訴
検察官は、起訴前勾留期間中に、被疑者を起訴するかどうかを判断します。
勾留されずに釈放された場合には、検察官が適宜のタイミングで起訴するかどうかを決定します。
起訴は公開法廷での裁判を求める「正式起訴(=公判請求)」が原則ですが、100万円以下の罰金または科料を科す場合は、被疑者に異議がなければ「略式起訴(=略式命令請求)」によることもできます。
都市公園法違反で起訴される場合、検察官から略式起訴を提案されるケースが多いでしょう。
なお、犯罪事実が認められる場合であっても、行為の内容や情状などによっては不起訴処分(起訴猶予)となることがあります。
④ 公判手続き~刑の執行
正式起訴された場合には、公判手続き(=刑事裁判)において有罪・無罪および量刑が審理されます。
審理が熟した段階で、裁判所は判決を言い渡します。
判決に不服がある場合は、上級裁判所に対する控訴や上告が可能です。
控訴・上告の手続きを経て判決が確定し、有罪であれば刑が執行されます。
ただし、執行猶予が付される場合もあります。
5、都市公園の利用許可申請を却下された場合の不服申し立て
植物を植えるため、またはその他の目的で都市公園の利用申請を行ったものの、公園管理者に不許可処分とされた場合には、審査請求および再審査請求による不服申し立てが認められています。
-
(1)公園管理者に対する審査請求
公園管理者による都市公園利用の不許可処分に不服がある者は、公園管理者に対して審査請求を行うことができます(行政不服審査法第2条、第4条第1号)。
審査請求を行う際には、正副2通の審査請求書を公園管理者に提出しなければなりません(同法第19条、同法施行令第4条第1項)。
審査請求を受理した公園管理者は、審理員による審理および行政不服審査会等への諮問などを経て判断を行います。
審査請求が認容された場合は、不許可処分の取り消しまたは変更がなされます。
審査請求の期間は原則として、不許可処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内です(同法第18条第1項)。
また、不許可処分があった日の翌日から起算して1年を経過した場合にも、審査請求ができなくなります(同条第2項)。
ただし、正当な理由がある場合には、上記の期間を経過しても審査請求を行うことは可能です。 -
(2)国土交通大臣に対する再審査請求
審査請求を棄却または却下する裁決に不服がある場合には、国土交通大臣に対して再審査請求をすることができます(都市公園法第34条第1項第1号)。
再審査請求の手続きには、審査請求に関する規定が準用されています(行政不服審査法第66条)。
再審査請求の期間は原則として、審査請求の裁決があったことを知った日の翌日から起算して1か月、または審査請求の裁決があった日の翌日から起算して1年を経過するまでです(同法第62条)。
ただし、正当な理由があれば、上記の期間を経過しても再審査請求を行うことができます。
6、まとめ
街中の公園や公道の緑地での「勝手植え」は、都市公園法違反にあたる犯罪行為です。
ルールを知らずに「勝手植え」をしてしまった場合は、速やかに植物を撤去しましょう。
都市公園を利用する際には、都市公園法や都市公園条例の規定を事前に確認して、ルールを守ることが大切です。
利用ルールについて不明な点があれば、各自治体の公園管理事務所(公園事務所)などに確認しましょう。
公園の利用についてトラブルが生じたり、罰則を科されたりした場合には、弁護士へのご相談を検討してください。
ベリーベスト法律事務所にご連絡いただければ、法律トラブルの対処経験に豊富な弁護士が、適切に対応するためのサポートやアドバイスをご提供いたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています