投資詐欺の種類と手口は? 被害にあったら弁護士に相談すべき理由

2022年01月19日
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投資詐欺の種類と手口は? 被害にあったら弁護士に相談すべき理由

高齢者を中心とした投資詐欺による被害が後を絶ちません。金融庁の統計によると令和2年1月1日から同年12月31日までの期間に金融サービス利用者相談室に寄せられた相談などの受付件数は、4万7723件でした。前年同期の相談受付件数が3万6507件であったことと比較すると、投資詐欺の被害が増えてきていることがうかがえます。

「必ず儲かるから大丈夫」、「元本は保証されているから安心」などと言葉巧みに勧誘され、多額の現金を騙し取られる事案が増えてきています。投資詐欺の事案では、加害者に資力がないなどの理由で、返金を求めても全額を回収することが困難なことがあります。そのため、投資詐欺にあわないように投資詐欺のよくある手口や注意点を知っておくことが重要になるのです。

本コラムでは、投資詐欺の種類や手口、被害にあったときに弁護士に相談すべき理由などについて、ベリーベスト法律事務所 熊本オフィスの弁護士が解説します。

1、投資詐欺とはどのような詐欺?

投資詐欺にあわないようにするためには、投資詐欺の種類と手口をあらかじめ知っておくことが重要です。以下では、投資詐欺の種類と手口について具体的に説明します。

  1. (1)投資詐欺における投資対象の種類

    投資詐欺では、さまざまな種類の商品や権利が投資対象とされています。投資詐欺の対象とされることの多い具体的な投資対象としては、以下のようなものが挙げられます。

    ① 未公開株
    未公開株とは、証券取引所に上場をしていない企業の株式のことをいいます。未公開株は証券取引所に上場をしていませんので、通常の株取引のように証券取引所を通じて購入することはできませんが、当事者間で売買すること自体は可能です。
    投資詐欺では、「上場すれば必ず儲かる」、「近いうちに上場する予定」などといって未公開株の購入を誘われたものの、実際に存在しない企業の株式や上場予定のない未公開株を購入させられて大損をする、という事例があります。

    ② 外国通貨
    外国通貨が投資詐欺の投資対象とされるケースでは、一般的にほとんど取引がされていない新興国や開発途上国の外国通貨を市場価格よりも割高で購入させるというケースがあります。
    「政府の開発事業によって近い将来大きな成長が見込める」などといって、実際に開発予定のない外国通貨を購入させられる、という詐欺の事例があります。新興国や開発途上国の通貨については、頻繁に取引がなされるものではありませんので、購入してしまうと別の通貨に変えることが難しいというデメリットも存在します。

    ③ 仮想通貨
    仮想通貨とは、電子データのみでやりとりされる通貨のことをいいます。法定通貨のように政府や中央銀行といった信頼できる管理者や発行者がおらず、主にインターネット上での取引などに用いられる通貨です。
    ビットコインなど有名な仮想通貨以外にもさまざまな種類の仮想通貨が存在しており、実在しない仮想通貨を投資対象として扱う業者も存在します。仮想通貨は、短期間で価格が大きく変動する可能性があります。「必ず値上がりする」などの甘い言葉に騙されないように注意しましょう

    ④ 土地などの権利
    節税対策を謳い文句としながら不動産の購入を持ちかけられることがあります。実在する不動産であればよいのですが、遠方で確認できないことをいいことに、海外の不動産を相場よりも高額な価格で購入させられたりすることもあります。
    そのほかにも太陽光発電や風力発電の売電権利を投資対象とすることがありますが、取引相場を知っていなければ、ほとんど利益の出ない権利を購入してしまうことがあるのです。

  2. (2)投資詐欺の手口

    上記のような投資対象の商品や権利を言葉巧みに購入させるのが投資詐欺の手口です。近年では投資詐欺の手口も巧妙化しているため、投資に詳しい人でも騙される可能性があるのです。

    ① 劇場型
    劇場型勧誘とは、別々の会社を装った詐欺師が入れ代わり立ち代わりに登場して被害者を騙す手口のことをいいます。たとえば、未公開株などの販売業者とその未公開株などを高値で買い取る業者が登場して、「未公開株などの取引は自分にとって有利な取引である」と被害者に誤認させて、販売業者と契約をさせるように仕向ける方法が劇場型の手口です。
    劇場型の手口では、被害者は、冷静な判断をすることができずに、早く購入しなければ損をしてしまうという心理状態に陥って騙されてしまいます。

    ② プロ向けファンド
    プロ向けファンドとは、プロの投資家を対象として出資金を募るファンドのことをいい、金融庁に届出をするだけで開設することができるファンドです。プロ向けファンドでは、例外的に49人までであれば一般投資家からも出資金を募ることができましたので、悪徳業者による法律の抜け道として利用されていました。
    しかし、金融商品取引法の改正によって、プロ向けファンドを一般の投資家に販売することは禁止されるようになっています。

    ③ ポンジ・スキーム
    ポンジ・スキームとは、高配当を謳い文句として投資家からお金を集める詐欺の手口です。投資家に対しては、出資してもらった資金を運用してその利益を配当すると説明していますが、実際には、資金運用を行わず投資家から集めた資金を配当金として支払っているにすぎないという特徴があります。
    最初のうちは、業者の説明どおりに配当金が支払われるため、信用してしまう投資家も多いですが、実際には単なる資金の横流しに過ぎませんので、いずれは破綻してしまいます。

2、投資詐欺の被害にあわないための注意点は?

投資詐欺の被害にあわないようにするために、投資を行おうとする際には以下の点に注意しましょう。

  1. (1)無登録で取引を行う業者に注意

    よく知らない業者から投資の話を持ちかけられたときには、当該業者が金融商品取引業の登録をしているかどうかを確認しましょう。
    海外の業者であっても、日本の居住者を対象に金融商品取引を行うためには、金融庁に金融商品取引業の登録をしていることが必要になります。登録の有無に関しては、金融庁のホームページ上で簡単に確認することができます。
    無登録であった場合には、違法な投資詐欺である可能性がありますので、注意して対応しましょう。

  2. (2)うまい儲け話にすぐに飛びつかない

    株式、外国通貨、仮想通貨などの金融商品については、経済状況に応じて価格が上下することが通常です。それによって利益を得ることもあれば、当然元金を下回って損失が出ることもあります。
    投資話を持ちかけられた際に、「必ず儲かる」、「元金を下回ることはない」などと必ず利益が出るといったことを請け負う業者には注意した方がよいでしょう。投資をする際には、投資によるリスクを十分に説明してもらい、納得した上で行うようにしましょう。

  3. (3)投資前に信頼できる人に相談をする

    投資詐欺の被害を受けた方の多くは、知人などに相談せず自分だけの判断によって投資を決断してしまったようです。しかし、劇場型詐欺のように多くの人間が入れ代わり立ち代わり登場してくる手口では、冷静な判断力を奪われてしまいます。
    そのため、投資をしようと考えたときには、家族や友人などの信頼できる第三者に相談をしてみるとよいでしょう。第三者に相談をすることによって、自分自身でも投資を見直すきっかけになりますし、第三者から客観的な意見を聞くことで詐欺被害に気付くことができる場合もあるのです。

3、投資詐欺の被害にあったときにはどこに相談できる?

投資詐欺の被害にあってしまったときには、以下のような相談先に連絡をするようにしましょう。

  1. (1)警察

    投資詐欺は犯罪行為であるため、詐欺の被害にあった場合には、警察に相談をすることができます。被害届や刑事告訴をすることによって、刑事事件として立件してもらえる可能性があります。
    もっとも、刑事事件化することで加害者に刑事罰が科される可能性はあっても、刑事裁判のみでは、被害者が投資詐欺によって奪われてしまったお金を回収することはできません。損害賠償を請求するためには民事手続きが必要とされるためです
    詐欺罪等の財産犯罪により犯人が得た財産(犯罪被害財産)を刑事裁判により犯人から没収し、その財産を金銭化してその事件により被害を受けた方に給付金を支給する制度(被害回復給付金支給制度)もありますが、投資詐欺では多数の被害者が存在することが多く、回復できたとしても被害額の一部しかないことが通常です。

  2. (2)金融庁

    金融庁の金融サービス利用者相談室では、投資詐欺に関する相談が受け付けられています。投資詐欺は巧妙な手口で行われるため、自分が投資詐欺にあっているのかどうかよくわからないという被害者も多くいます。金融サービス利用者相談室では、被害者からの漠然として相談であっても論点を整理して、必要に応じて他の相談機関を案内してくれるなどの対応がなされます。
    ただし、すでに業者との間でトラブルになっている場合に「返金をしてほしい」などの具体的な対応を金融庁に求めても、管轄が違うために断られてしまう可能性が高いでしょう

  3. (3)日本証券業協会

    日本証券業協会の被害防止コールセンターでは、金融庁の金融サービス利用者相談室と同様に、投資詐欺に関する被害相談に応じてもらえます。電話一本で、無料で投資詐欺に詳しい専門家と話ができますので、怪しい儲け話を持ちかけられた場合には、利用してみるとよいでしょう。
    ただし、金融庁と同じく、被害防止コールセンターでも現実に生じてしまったトラブルに関する対応はしていませんので注意が必要です

  4. (4)国民生活センター

    国民センターは、投資詐欺以外にも消費者被害に関するあらゆる相談に応じている機関です。被害者の状況に応じて、問題解決のための助言やあっせんなどを行ってもらうことができます。

  5. (5)弁護士

    投資詐欺によって被害を受けたお金を取り戻すのであれば、弁護士に相談をするのがもっとも有効な手段です
    先述したように、警察に相談をすることによって刑事事件として立件してもらえる可能性は出てきますが、お金を取り戻すための民事手続きは、警察では対応してもらえません。
    そのほかの機関も相談には応じてもらえますが、具体的な対応については、原則として被害者自身が行わなければなりません。
    弁護士であれば、被害者の代理人として業者と交渉をすることができます。また、被害の事実を示すのに十分な証拠があれば、奪われたお金を取り戻すことも可能になるのです。

4、投資詐欺の損害賠償を請求するなら弁護士に相談

投資詐欺の被害にあった場合には、すぐに弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)回収可能性の判断と実際の回収を任せることができる

    投資詐欺の被疑者としては、「投資詐欺によって奪われたお金を全額取り返したい」と考えることでしょう。
    しかし、投資詐欺の事案では、他にも多数の被害者がいることが少なくありません。また、投資詐欺を行った業者に十分な資力がないこともあります。投資詐欺の被害を立証することができたとしても、加害者に十分な資力がない場合には、被害の回復を図ることが難しくなってしまうのです。
    弁護士であれば、加害者から回収する可能性がどの程度あるかを調査することができます。そして、回収可能性がある事案に関しては、弁護士に代理人として交渉や裁判まで一任させることもできるのです。

  2. (2)民事だけでなく刑事事件の対応もしてもらえる

    回収可能性を判断した結果、奪われたお金を取り戻すことが難しいという場合もあります。しかし、仮にお金を取り返すことはできなくても、詐欺という悪行を犯したことへの処罰はされてほしい、と被害者は望むはずです。
    弁護士は、お金の回収といった民事上の手続きだけでなく、警察署への同行、刑事告訴などの刑事上の手続きについても対応することができます
    「一人で警察署に相談に行くのは不安だ」という方でも、弁護士が同行して被害状況について適切に説明することができますので、安心して任せることができるのです。

5、まとめ

投資詐欺の手口は、年々巧妙化してきており、被害にあってもすぐには気付くことができません。まずは、投資詐欺にあわないことが重要ですので、投資をしようとする際には、自分だけでなく家族や友人などに相談をしながら、冷静に判断することをこころがけましょう。
もし投資詐欺の被害にあってしまった場合には、できるだけ早く対応を開始することが、奪われたお金を回収するためには重要になります。
熊本県や近隣県で詐欺の被害にあわれた方は、まずはベリーベスト法律事務所 熊本オフィスまでご連絡ください

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