離婚時の不動産の名義変更はどのように行う? 住宅ローンは?
- 財産分与
- 離婚
- 不動産
- 名義変更
令和3年の熊本市における2021年の婚姻件数は3566件、離婚件数は1284件でした。
夫婦が離婚する際には、マイホームなどの不動産を財産分与する場合があります。その際には、不動産の名義変更(所有権移転登記)の手続きが必要となります。ただし、財産分与の対象とする不動産に住宅ローンなどの抵当権が設定されている場合には、名義変更が認められない可能性もあります。
スムーズに財産分与を行うため、財産分与に関しては弁護士に相談することをおすすめします。本コラムでは、離婚時における不動産の財産分与や名義変更に関して注意すべきポイントを、ベリーベスト法律事務所 熊本オフィスの弁護士が解説します。
1、不動産を財産分与する際の名義変更手続き
離婚時に不動産を財産分与する場合には、法務局で所有権移転登記手続きを行う必要があります。
-
(1)所有権移転登記手続き|不動産の所在地の法務局で行う
所有権移転登記とは、不動産の所有者変更を登記簿上に記録することをいいます。
第三者に不動産の所有権取得を主張するためには、所有権移転登記を経由する必要があります(民法第177条)。
もし不動産が二重譲渡された場合には、原則として、ふたりの譲受人のうち先に所有権移転登記を得た側が、不動産の完全な所有権を取得します。
したがって、不動産の財産分与を受けたら、不動産所有権移転登記手続きを行うことは非常に重要です。
所有権移転登記手続きの申請先は、不動産の所在地を管轄する法務局となります。 -
(2)登記手続きの必要書類
不動産の所有権移転登記手続きのために必要な書類は、以下のとおりです。
- 登記申請書
- 登記原因証明情報(財産分与協議書など)
- 住民票の写し(住民票コードを記載すれば省略可)
- 登記識別情報
- 登記義務者の印鑑証明書
- 固定資産評価証明書(登録免許税の計算に必要)
- 本人確認書類
- 委任状(司法書士などに登記手続きを委任する場合)
不動産の所有権移転登記手続きはご自身で行うこともできますが、司法書士に依頼することもできます。
2、財産分与による住宅ローンの名義変更の可否・手続き
財産分与しようとするマイホームの土地や建物について住宅ローンが残っている場合には、債権者である金融機関の承諾を得たうえで、住宅ローンの債務者を変更する必要があります。
その際には、新所有者について再審査が行われる点に注意してください。
-
(1)住宅ローンの名義変更は、金融機関の同意が必要
住宅ローンが残っている不動産を財産分与する場合、債権者である金融機関の承諾を得たうえで、住宅ローンの債務者を変更しなければなりません。
住宅ローンの場合には「債務者と物件所有者が同じでなければならない」という原則があります。
住宅ローンを組んで購入した物件には、債権者(または保証会社)のために抵当権が設定されます。
債務者としては、債務不履行を起こして抵当権が実行されると、住んでいる物件を失ってしまい、生活に多大な支障が生じることになります。
そのため、債権者の側としては、「債務者と物件所有者が同じなら、債務者は住宅ローンをきちんと支払うだろう」と期待して貸し付けを行います。
しかし、住宅ローンの債務者と物件所有者が別になってしまうと、この前提は通用しなくなります。
「もはや住んでいないので、物件を失ってもいいか」などと債務者が考えてしまうようになる可能性もあるでしょう。
そのため、住宅ローンの債務者と物件所有者が別になった場合には、債権者である金融機関は、債務者に対して一括返済を請求できることになっているケースが多いです。
これを「期限の利益の喪失」といいます。
住宅ローンが残っている不動産を財産分与する際に、期限の利益の喪失を避けるためには、住宅ローンの債務者を変更する必要があります。
債務者を変更して財産分与後の新所有者と新債務者を一致させれば、期限の利益の喪失を避けることができます。 -
(2)名義変更時には再審査が行われる
不動産の財産分与に伴い、住宅ローンの債務者変更を行う際には、金融機関による再審査が行われます。
金融機関としては、新債務者がきちんと住宅ローンを返済する能力を有しているかどうか確認する必要があるためです。
特に、夫婦でペアローンを組んでいた場合や財産分与を受ける側の方が低収入の場合には、債務者としての返済能力が下がることになります。
この場合、元々借りていたのと同額の住宅ローンを借りることはできない可能性が高くなってしまいます。そうなると、その物件の財産分与自体が頓挫してしまう可能性もあるため、くれぐれも注意してください。 -
(3)住宅ローンの債務者変更ができない場合の対処法
住宅ローンの債務者変更が認められない場合には、財産分与の方法を見直さなければなりません。
基本的には、住宅の土地・建物の名義はそのままにする前提で、財産分与の方法を検討することになるでしょう。
名義人(所有者)ではない側がそのまま住み続けたい場合には、無償で借りるか(使用貸借)、または賃料を支払って借りる(賃貸借)ことを検討してください。
ただし、物件の所有者と使用者が別になる場合には、後にトラブルが生じるリスクも高まります。
単独名義・共有名義のどちらであるかもふまえつつ、個別の事情に応じた対策を行うことが大切です。
住宅に関するトラブルを避けるためには、売却して代金を財産分与することも検討すべき場合もあります。
いずれにしても、総合的な観点から財産分与の方法を検討することが重要であるため、専門家である弁護士にご相談ください。
3、不動産名義変更を行うことのデメリット
財産分与によって不動産の名義を変更する場合には、税金や融資手数料などの負担が発生することがあります。
不動産の財産分与をどのように行うべきかどうかは、デメリットも考慮に入れたうえで、総合的に検討しましょう。
-
(1)登録免許税がかかる
財産分与によって取得した不動産について所有権移転登記手続きを行う際には、登記申請書に登録免許税額の収入印紙を貼付する必要があります。
登録免許税額は、固定資産評価額の2%です。
たとえば、固定資産評価額が2000万円の場合、40万円の登録免許税がかかることになります。
都市部の物件の場合はとくに資産価値が高いため、登録免許税が高額になりやすい点に注意してください。 -
(2)譲渡所得税が発生する場合がある
不動産を財産分与した場合、譲渡所得税との関係では、財産分与の時点で当該不動産を譲渡したものとみなして課税が行われます。
したがって、取得費(減価償却費は控除)・譲渡費用の合計に比べて離婚時の不動産価格の方が高い場合には、原則として譲渡所得税・住民税・復興特別所得税の課税が発生することになります。
税率は、財産分与をした年の1月1日時点で所有期間が5年超であれば20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)、5年以下であれば39・63%(所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0・63%)です。
ただし、マイホームを財産分与した場合には特別控除により、最高3000万円までの譲渡所得が非課税となります。 -
(3)住宅ローンを借り換える場合は融資手数料がかかる
マイホームを財産分与することに伴い、住宅ローンの借り換えをする場合には、融資手数料の負担が発生します。
融資手数料の計算方法は金融機関によって異なりますが、借入金額の2.2%に設定されているケースが多いです。
この場合、たとえば5000万円の借り換えであれば、110万円の融資手数料が発生します。
借り換えの融資手数料はかなり高額になることがあるので、事前に借り換えの条件をよく確認しましょう。
4、配偶者との離婚については弁護士に相談を
配偶者との離婚を検討している場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
離婚にあたっては、さまざまな離婚条件を取り決めなければなりません。
財産分与・慰謝料・親権など、条件についてもめて、トラブルが発生する可能性のある論点がたくさんあります。
弁護士のサポートを得ることで、これらの条件についても適切に調整して、円滑に離婚を成立させやすくなるでしょう。
また、弁護士は、離婚協議・離婚調停・離婚訴訟などの手続きを全面的に代行することができます。
配偶者と直接やり取りする必要がなく、精神的なご負担を軽減できる点も、弁護士に任せることのメリットです。
5、まとめ
離婚時に不動産を財産分与する場合、法務局において所有権移転登記手続きを行う必要があります。
さらに、住宅ローンが残っている場合には債務者変更が必要になりますが、その際には金融機関による再審査が行われる点に注意してください。
不動産の財産分与を含めて、離婚問題にはトラブルになりやすいポイントが数多く含まれています。
トラブルなく円滑に離婚を成立させるため、弁護士に依頼することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所は、離婚に関するご相談を受け付けております。
配偶者との離婚を検討されている方は、まずはベリーベスト法律事務所にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
- |<
- 前
- 次
- >|