ギャンブル依存症とは? 治療すべき? 借金を債務整理で解決する方法
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熊本県阿蘇村にある「宝来宝来神社」は、御神体である「当選岩」のご利益で宝くじに当たった人からの寄付金で建立された神社であり、ギャンブルを好まれる方々が日本各地から参拝されています。
パチンコや競馬などのギャンブルは、ほどほどに楽しめれば日々の刺激となりますが、ギャンブル依存症になるというリスクが潜在しています。
ギャンブル依存症は、借金を重ねてしまうことがひとつの特徴です。本コラムでは、ギャンブル依存症とはどんな病気か、またギャンブル依存症による借金が発覚した場合、どう対処すればよいのかについて、べリーベスト法律事務所 熊本オフィスの弁護士が解説します。
1、ギャンブル依存症とは
ギャンブルは日本語で「賭博」「博打」といった意味があります。ギャンブルにはパチンコやスロット、競馬、FX、宝くじ、オンラインギャンブルなどさまざまなものがあります。これらの回数を重ねるごとにだんだんのめりこみ、生活や仕事に支障をきたすようになってきたら、ギャンブル依存症の可能性があります。
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(1)ギャンブル依存症は脳の病気
ギャンブル依存症は、ギャンブルなどの行為を繰り返すことによって脳のブレーキにあたる部分が壊れてしまい、「ギャンブルをしたい」という欲求を自分自身でコントロールできない状態を指します。依存症は病気のため、本人の意志や努力でどうにかなるものではありません。ギャンブル依存症患者の中には、うつ病や不安症などの精神疾患を併発したり、ADHDなどの発達障害をあわせ持つ方もいます。
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(2)ギャンブル好きとギャンブル依存症の違いとは
ギャンブルをしていても、ギャンブル好きでとどまる場合と、ギャンブル依存症になってしまう場合があります。ギャンブル好きとギャンブル依存症には、以下のような違いがあります。
ギャンブル好き ギャンブル依存症 賭け方 あくまでも「娯楽」といえる範囲で賭けている。 借金など問題を起こすほどに賭け、追い詰められる。 心理・行動 ギャンブルをしたくても、状況によりがまんできる。 賭けはじめると止まらなくなり、自分でコントロールがきかなくなる。 生活面 ギャンブルは生活の一部ではあるが、きちんと仕事や生活はできている。 ギャンブルのことしか考えられなくなり、仕事や生活がままならなくなる。 金銭面 お小遣いの範囲で楽しんでいるので、多少負けても特に問題はない。 ギャンブルに生活費や家のお金をつぎ込むようになったり、借金を繰り返したりする。 -
(3)こんな症状が現れたら要注意!
ギャンブルにはまっている配偶者や子どもに、以下のような症状があらわれたら要注意です。早めに依存症の診療経験が豊富な精神科医などに相談したほうがよいでしょう。
- 負けを取り返すまで何度も賭け続ける
- 嘘をついたり、ギャンブルをしている証拠を隠す
- 金銭感覚が乱れ、ギャンブルのために多額の借金を重ねる
- 自分では「ギャンブルをする頻度はたいしたことがない」と思っている
- ギャンブルをしていることを正当化する
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(4)ギャンブル依存症は治療できる
ギャンブル依存症は病気なので、きちんと治療をすれば脳機能を回復させることができます。IR(統合型リゾート)の設置をにらんで、厚労省は、令和2年1月10日に中央社会保険医療協議会をひらき、令和2年4月よりギャンブル依存症の治療を公的医療保険の適用対象とすることを表明しました。これが実現すれば、今まで自費だったギャンブル依存症の治療費が、最大3割ですむようになります。ただし、「ギャンブル依存症は自己責任だ」として、公的医療保険を適用することに反発の声もあります。
2、ギャンブル依存症で借金をしている疑いがあったら
ギャンブル依存症の患者は、借金を重ねていることが多くあります。平成29年度に行われた調査では、ギャンブル依存症が疑われる者は1か月に約6万円ものお金を掛けていることがわかっています。家族の借金がわかったら、あせってしまう方も少なくありませんが、まずは落ち着いて現状を把握するところから始めましょう。
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(1)今起きている問題やその原因を把握する
はじめに、借金ではなく、「起きている問題そのもの」に目を向けます。仕事を休みがちになっている、毎日帰宅が遅い、家に置いているお金や預貯金通帳を勝手に持ち出すことがある、家族や友人と過ごす時間が明らかに減ったなど、現状を把握しましょう。そしてその原因が何なのかを突き止めます。
本人から話を聞いてみて、ギャンブルをしている可能性があり、それがもとで借金までしている場合は、ギャンブル依存症を疑ったほうがよいかもしれません。 -
(2)借金返済よりも医療機関に相談に行くほうが先
本人がギャンブルのために多額の借金をしていることが発覚しても、あわてて家族が借金の肩代わりをしないことが重要です。家族が借金をすべて返したとしても、根本的な問題は何も解決しないからです。
「借金を返さなければ」とあせってしまう気持ちはわかりますが、まずは本人に依存症治療専門の精神科医などへの受診を促しましょう。本人が行きたがらなければ、家族だけでも先に相談に行くことが大切です。 -
(3)どれだけ借金があるかを確認する
次に、本人がどれだけ借金をしているかを確認します。本人の口から直接聞くほか、借用書やクレジットカードのキャッシングの明細など、証拠資料を探して金額を確認しましょう。このとき、借金を100%明らかにすることが肝心です。たとえば、本人は借金が100万円あるのに、95万円については白状しても、残り5万円の存在を隠してしまうことがあります。そうなると、ここからまたギャンブルを再開してしまうかもしれません。そのため、借金はすべて洗いざらい明らかにするようにしましょう。
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(4)家族が金銭管理をする
ギャンブル依存症の患者は、お金が自分で管理ができなくなっていることが大半です。そこで、お金の使い込みを防ぐ対策として、現金だけでなく、本人名義の預貯金口座の通帳やキャッシュカードはすべて家族が管理するようにします。本人にお金を持たせるときは、500円以内にする、紙幣ではなく小銭を持たせる、レシートをもらって毎日精算するなどの工夫をしましょう。
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(5)自助グループとつながる
ギャンブル依存症を改善するには、同じギャンブル依存症の患者が集まる自助グループとつながることも大切です。自助グループに参加すれば、同じ症状で苦しむ仲間に出会い、悩みを共有することで支え合っていけることがメリットです。治療を受けるときは、できれば自助グループと連携している病院を選ぶとよいでしょう。
3、ギャンブルによる借金は債務整理を
ある程度ギャンブル依存症の症状が落ち着いてきたら、借金返済のことを考え始めましょう。債務整理には任意整理・個人再生・特定調停・自己破産の4つの方法があります。どの方法で債務整理を行うのがよいのかについては、弁護士に相談されることをおすすめいたします。
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(1)任意整理
任意整理とは、将来発生する利息や遅延損害金をカットしてもらった上で、借金を減額してもらえるよう自分で金融機関や貸金業者等と交渉する方法です。10年以上前から借金を重ねていた場合は、利息の引き直し計算をすると、過払い金が発生している可能性があります。その場合は、過払い金を元本の返済にあてることで借金を完済できることもあります。
裁判所を介さずにすむ点や、整理をする借金を選べる点、財産を残せる点がメリットですが、借金の減額幅が少ない点や、交渉が不成立に終わる可能性がゼロではない点がデメリットです。 -
(2)個人再生
個人再生とは、裁判所に申し立てをして借金を大幅に減額してもらった上で、「再生計画」と呼ばれる借金返済計画を立て、原則3年かけて返済していく方法です。持ち家などの財産を手放さずに済む点や借金の減額幅が大きい点がメリットですが、給与収入など反復的かつ継続的な収入がなければ利用できない点がデメリットです。
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(3)特定調停
特定調停も、裁判所に申し立てが必要となる債務整理の方法のひとつです。裁判所の仲裁のもとで債務者と金融機関や貸金業者等とが話し合い、利息の引き直し計算をしたうえで借金を減額してもらう方法です。
借り入れ当時の金利を現行の利息制限法上の金利に引き下げて利息を再計算することで借金を減額できる点や、整理をする借金を選べる点がメリットですが、返済が滞れば特定調停が成立したときにつくられる調停調書が債務名義となり強制執行がかけられる点がデメリットです。 -
(4)自己破産
自己破産とは、借金返済ができなくなったときに、裁判所に申請することで借金を帳消しにしてもらう方法です。
しかし、ギャンブルで多額の借金を背負ってしまった場合、借金返済が免責されない「免責不許可事由」にあたり、自己破産できない可能性があります。ただ、会社勤めをしているなどでコンスタントに収入があり、深い反省の意を裁判所に示せば、裁判官の職権によって免責されることがあります。これを「裁量免責」といいます。
なお、借金の主な原因がギャンブルである場合、管財人が財産や借金の原因の調査を行う「管財事件」となる可能性が高く、その場合には裁判所に20万円程度の現金を納める必要があります。
自己破産は免責決定となれば借金を返済しなくてすむ点がメリットですが、自己破産の手続き中は一定の資格が制限されること、名前が官報にのることがデメリットです。
4、債務整理を弁護士に依頼する3つのメリット
債務整理を検討されるときは、弁護士に相談のうえ、依頼されることをおすすめします。こちらでは、債務整理を弁護士に依頼するメリットについてご説明いたします。
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(1)借金の取り立てがなくなる
弁護士と委任契約を結ぶと、金融機関や貸金業者のもとに受任通知が送られます。受任通知が相手方に届いた時点で相手方は直接債務者と連絡することができなくなるため、借金の取り立ての電話などがなくなります。これがなくなるだけでもずいぶんと気が楽になるのではないでしょうか。
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(2)手続きや交渉を一任できる
自力で手続きを行おうとすると、必要書類を集めるのにも、書類をミスなく記入することも多大な労力が必要です。また、貸金業者などは交渉経験が豊富なので、交渉をするうえでこちら側が不利になることが十分に考えられます。その点、弁護士に依頼すれば、煩雑な手続きや相手方との交渉をすべて一任できるので、安心して債務整理にのぞむことができるでしょう。
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(3)借金額が大幅に減る可能性が高くなる
債務整理は、借金額を減額もしくは帳消しにするために取る手続きです。弁護士に依頼すれば、任意整理でも交渉を有利に進め、減額できる幅が大きくなる可能性があります。また、ギャンブル理由は認めてもらうのが難しい自己破産でも、弁護士が債務者の反省の意を示すなど裁判所にはたらきかけることで、免責を認めてもらえる可能性も高くなります。
5、まとめ
ギャンブル依存症による借金問題を解決するには、ギャンブル依存症を治すことと、債務整理を行うことの両方が必要です。借金額があまりに大きければ家族としてもあせってしまうかもしれませんが、本人がまずは治療を受けて脳機能を回復させることのほうが先決です。その後、借金をどうしていくかを考えましょう。
その際は、ベリーベスト法律事務所 熊本オフィスの弁護士がご相談に乗りますので、お気軽にご連絡ください。
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