刑事事件の示談金吊り上げを防ぐには? 相場や成立までの流れ
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示談交渉において、被害者の感情が収まらず、通常の相場よりも高額な示談金を提示される場合があります。こうした示談金の吊り上げや、そもそも示談交渉自体が困難な場合、どうすればよいのでしょうか。
本記事では、示談の重要性や、示談金の吊り上げを防ぎ示談を成立させるための弁護士のサポートなどについて、ベリーベスト法律事務所 熊本オフィスの弁護士が解説します。
1、刑事事件の加害者が示談をするメリット
刑事事件において、被害者との示談交渉は非常に重要です。加害者が示談をすることの主なメリットは以下のとおりです。
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(1)起訴されにくくなる
犯罪が成立する場合でも、社会における更生が適当であると検察官が判断すれば、不起訴処分(起訴猶予)となることがあります。
示談が成立していれば、被害弁償や反省の姿勢が認められるため起訴が見送られる可能性が高まります。ただし、示談成立は必ず不起訴となるわけではありません。被害の重大性や前科の有無なども含めて総合的に判断されます。 -
(2)量刑が軽くなることがある
仮に起訴されたとしても、刑事裁判において示談が成立していることは、加害者にとって有利に考慮されます。
その結果量刑が軽くなり、執行猶予が付されて刑務所への収監を回避できる可能性が高まります。しかし、重大事件では実刑を免れないこともあるため、過度な期待は禁物です。 -
(3)親告罪の場合は、告訴を取り下げてもらえることがある
器物損壊罪などの親告罪では、被害者などの告訴がなければ、検察官は被疑者を起訴することができません。
したがって、示談の成立によって、被害者が告訴を取り下げれば、起訴がなされずに事件が終了します。
また、親告罪ではない犯罪についても、被害届を取り下げられた事実があれば、被疑者に有利な事情として考慮されることもあります。 -
(4)民事訴訟が泥沼化するリスクが減る
被害者の被害感情が強い状態では、民事訴訟を通じて多額の損害賠償を請求され泥沼化するおそれがあります。
あまりにも多額な損害賠償を請求された場合、たとえ謝罪意識があったとしても、加害者としては争わざるを得なくなります。
弁護士が介入したうえで誠意ある謝罪や示談金の支払いが完了していれば、民事訴訟を提起される可能性は低くなるでしょう。
2、刑事事件の罰金と示談金の相場は?
刑事事件を起こした場合、示談金の他にも罰金の支払いが求められます。
罰金は検察庁に納付し、示談金は被害者へ支払います。
罰金刑が定められている主な犯罪と、罰金(法定刑)は以下の通りです。
| 罪名 | 法定刑 |
|---|---|
| 窃盗罪 | 10年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
| 傷害罪 | 15年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
| 暴行罪 | 2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料 |
| 性的姿態等撮影罪(盗撮行為) | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
| 迷惑防止条例違反(痴漢行為) | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
| 住居侵入罪 | 3年以下の懲役または10万円以下の罰金 |
※罰金は1万円以上、過料は1000円以上1万円未満
※迷惑防止条例違反(痴漢行為)は「福岡県迷惑行為防止条例」による
なお、示談金に明確な相場はなく、被害者との交渉次第で金額が変動します。
一般的には過去の裁判例などを参照しながら、合理的な条件での示談成立を目指すことになります。弁護士のサポートを受けながら、適正額かつ早期の示談成立を目指しましょう。
お問い合わせください。
3、刑事事件の示談成立までの流れ
刑事事件の示談が成立するまでの流れは、大まかに以下のとおりです。
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(1)警察、検察官に被害者の連絡先を聞く
示談交渉の提案の連絡をするため、まずは被害者の連絡先を把握する必要があります。
被害者の連絡先が分からない場合は、弁護士を通じて、検察官や警察に対し「示談交渉の意思がある」ことを伝え、被害者との連絡の可否を確認してもらうのが一般的です。
なお、被害者のプライバシーや安全の観点から、連絡先そのものが開示されることは稀であり、連絡や交渉は原則として弁護士を介して行われます。そのため示談を希望する場合には、できるだけ早い段階で弁護士に依頼することが重要です。 -
(2)弁護士を通じて被害者に連絡を取り、示談交渉をする
被害者が連絡に応じ、返信を受けたら、示談の条件(示談金の額、支払方法、謝罪の有無など)について話し合いを進めることになります。
金額提示に差がある場合は、過去の裁判例や被害の具体的な内容、加害者の反省の姿勢などを踏まえながら、弁護士が金額の調整を図ります。
被害者の感情にも配慮しながら、無理のない範囲で誠実に交渉を行うことが、示談成立のためには重要です。 -
(3)示談書を締結し、示談金を支払う
双方の間で示談の条件を合意できたら、その条件を記載した示談書を締結します。
示談書に記載すべき主な事項は、以下のとおりです。① 謝罪の意
② 犯行内容
③ 示談内容- 示談金の金額および支払方法
- 被害者が示談に合意したことの明示
- 正当な理由なく口外しない旨の誓約
- 今後、これ以上の請求をしない旨などの記載(いわゆる「清算条項」)
- 告訴や被害届の取下げに関する合意(親告罪の場合)
示談書は、加害者、被害者にとって大変重要な法律文書です。示談内容はケース・バイ・ケースですので、後日トラブルにならないためにも実績の豊富な弁護士のサポートを受けることが大切です。
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(4)検察官や裁判所に示談書などを提出する
被害者との間で締結した示談書は、その写しを検察官や裁判所に提出しましょう。起訴前なら検察官、起訴後なら裁判所に提出します。
示談書によって示談が成立したことを伝えれば、検察官や裁判所がその事実を考慮するため、不起訴や量刑の軽減につながる可能性があります。
4、示談交渉が難航するケース│拒否・金額吊り上げ等
刑事事件の示談を成立させるのは、簡単なことではありません。示談交渉が難航しやすいのは、主に以下のケースがあります。
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(1)被害者に連絡自体を拒否されることがある
被害者は、加害者に対する嫌悪や被害感情を強く抱いているケースが多いです。
加害者からの連絡自体を被害者に拒否されてしまうと、示談を成立させることはできません。 -
(2)示談金を吊り上げられることがある
被害感情の強さなどが影響して、被害者は適正な水準を大きく超えて示談金額を吊り上げられることもあります。
加害者側と被害者側の提示額が離れすぎていると、話し合っても歩み寄りにくく、示談の成立が困難になるでしょう。 -
(3)示談金を準備できないことがある
示談が成立したら、その内容に従って被害者に示談金を支払わなければなりません。
しかし、加害者に支払い能力がなく、家族などの協力も得られない場合は、示談金を準備できないことがあります。示談金が低い金額になってしまうと、被害者としても示談に応じることが難しくなってしまいます。
5、示談交渉を弁護士に依頼するメリット
刑事事件の示談交渉を行う際には、弁護士への依頼が重要です。できる限り早期に弁護士へご依頼いただくことをおすすめします。
刑事事件の示談交渉を弁護士に依頼するメリットは、主に以下の各点が挙げられます。
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(1)被害者の心理的バリアを緩和できる
加害者本人が示談交渉に臨むと、被害者が嫌悪感を覚えたり、被害当時のトラウマを思い出したりして、交渉が成立しにくくなることがあります。
とくに暴力や性犯罪など被害感情が強い事件では、直接接触を求めること自体が相手にとって強い精神的負担となり二次被害となるおそれがあります。
弁護士を介して交渉することで、被害者は安心して冷静に対応しやすくなり、示談に応じる可能性も高まります。 -
(2)適正額で示談を成立させやすい
示談金の適正額は、同種の事件に関する過去の裁判例などによって決まります。しかし、被害者側が感情的になっている場合や、加害者側が個人で対応している場合には、法的に妥当とされる範囲を大幅に超えた高額な金額に吊り上げられてしまうこともあります。
弁護士に依頼すれば、過去の判例や実務的な相場に基づいて、過大な請求には法的根拠をもって冷静に対応し、依頼者にとって無理のない金額での合意形成を目指すことが可能です。 -
(3)示談を弁護活動につなげることができる
示談が成立した場合、弁護士は検察官や裁判所に示談書を提出したうえで、加害者に有利な事情として主張します。
また、示談書には被害者が処罰感情を示さないことや、謝罪・被害弁償を受け入れたことが記載されるのが一般的なため、裁判における量刑判断において大きく考慮されます。
弁護士は、示談の内容とともに、その成立過程や被告人の反省の様子も含めて主張し、不起訴処分や起訴猶予、あるいは執行猶予付き判決に向けた弁護活動へとつなげます。
6、まとめ
窃盗事件や傷害事件などを起こしてしまった場合、起訴や重い刑罰を避けるためには、被害者と示談を成立させることが重要です。
被害者が多額の慰謝料を主張するなど、示談金額を吊り上げてくることも想定されるので、弁護士を通じて示談交渉を行うことが望ましいです。
ベリーベスト法律事務所は、刑事弁護に関するご相談を随時受け付けております。被害者との示談交渉から刑事裁判での弁護活動に至るまで、早期の身柄解放や重い刑事処分の回避を目指して誠心誠意サポートいたします。
ご自身や家族が刑事事件を起こしてしまった場合は、速やかにベリーベスト法律事務所へご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
