相続放棄をするなら家の片付けには注意が必要! 相続放棄のポイント

2024年09月19日
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相続放棄をするなら家の片付けには注意が必要! 相続放棄のポイント

裁判所のサイトでは、熊本家庭裁判所で行える手続きに必要な書式例や切符などについての案内が掲載されています。ご自身で相続放棄や限定承認の手続きを行う場合はぜひ参考にしてください。

相続放棄は、家や現預金、借金など相続権があるすべての財産を放棄する手続きです。相続放棄をしたいと考えている場合は、故人の家を片付けたり遺品を整理したりすることはやめましょう。相続放棄ができなくなる可能性があります。

本コラムでは、相続の基礎知識と故人の家の片付けの注意点について、ベリーベスト法律事務所 熊本オフィスの弁護士が解説します。


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1、相続放棄をするなら故人の家の片付けには注意

遺品整理をするために家の片付けをしてしまうと、「相続する意志がある」とされ、相続放棄ができなくなることがあります。そのため、相続放棄を考えているのなら、故人の家の片付けには片付けの方法に注意が必要です。そこでまず、相続の基礎知識について解説します。

  1. (1)相続放棄とは

    相続放棄とは、被相続人(故人のこと)の財産や負債などすべてに対する権利・義務を一切引き継がずに放棄することをいいます。一般的な相続の場合、プラスの財産、マイナスの財産そのすべてを相続することになります。

    しかし、相続放棄をした場合には、このどちらの財産も引き継がないということになります。一般的には、プラスの財産より借金などのマイナスの財産が多い場合に相続放棄します。この相続放棄は、裁判所に書類を提出することで認められます。

    なお、相続放棄の手続きには相続開始から3か月以内という期間制限があるため注意が必要です。

  2. (2)相続放棄ができなくなる単純承認とは

    単純承認とは、被相続人のプラス・マイナスの財産を問わず、すべての財産を相続することをいいます。

    単純承認とみなされる行為をすると、全財産を相続する意志があるとされ、相続放棄ができなくなります。たとえば、故人の家の片付けも単純承認とみなされてしまう可能性があります(次章で後述)。また、3か月以内に相続放棄をしない場合も、自動的に単純承認となるため注意が必要です。

  3. (3)故人の家の片付けをするとなぜ単純承認にみなされるのか

    相続放棄をするのであれば、故人の家の片付けや処分をすることはできません。民法では、相続人が相続財産を処分した場合には単純承認したものとみなすと規定されており(民法921条1号)、どのような形であれ、相続財産を処分する行為は、相続する意思があるとして、相続放棄が認められなくなってしまいます。

    もっとも、相続放棄をする場合でも相続人には相続財産の管理義務があります(民法第940条)。そのため、賃貸物件に故人が住んでいた場合には、ごみをそのまま放置すると管理組合と相続人間で問題に発展してしまう可能性があります。どのように片付けすべきか、次章でみていきましょう。

2、相続放棄をする場合に片付けてはいけないものとは?

相続放棄をする場合には、片付けしてはいけないものと片付けてもよいものをしっかり知っておくことが肝心です。

  1. (1)片付けてはいけないもの

    1章で述べたように、故人の持ち物を捨てる・もらうなどは基本的にやってはいけません。また、家の解体・リフォーム・家具家財の片付け・家の処分などの行為も相続放棄が認められなくなってしまう可能性があります。

    さらに、故人名義の口座のお金を使って家賃の支払いや公共料金の支払いをしてしまった場合にも相続放棄が認められなくなる可能性があります。故人のお金、つまり相続財産に手を出したと判断されてしまうからです。どのようなものを片付けていいのか不安があれば、弁護士に確認することをおすすめします。

  2. (2)片付けてもよいもの

    他方で、片付けてもよいものもあります。明らかなごみや資産価値のないものを処分したとしても単純承認と認められるおそれはありません。たとえば、生ごみ、ペットボトル、缶などが明らかなごみにあたります。

    また資産価値のないものとは、家族や親族で撮った写真や手紙、位牌、着古した衣服などが挙げられます。本人にとっては価値のある物でも、一般的に金銭価値がないと考えられるからです。そのため、これらの物であれば、処分しても単純承認とみなされる可能性が低いでしょう。また、家族でこれらの物を形見分けとして受け取ったとしても単純承認となる可能性は低いといえます。

  3. (3)価値がなさそうな物であっても注意が必要

    もっとも、価値がなさそうに思えても実は第三者からみると金銭的価値があったという場合もあります。たとえば、故人のコレクションです。

    相続人の個人的な視点からみると金銭的価値がないようにみえる物でも、市場では高い金銭的価値があることがあります。プラモデルやカメラ、切手など金銭的価値がある可能性がある物はさまざまです。そのため、片付けをするのなら家族写真や手紙だけにするようにしましょう。

    もし、自分では判断がつかないたくさんのコレクションがある場合には、片付ける前に弁護士に相談するようにしましょう

3、相続放棄をしても財産の管理義務は残る

相続放棄をしても財産の管理義務は残っています。すなわち、自分は相続人として遺産を引き継がないとしても、相続が確定するまでは財産の管理をしなければなりません。これは、相続人としての義務であるため、避けて通ることができません。

相続財産清算人の役割や、管理義務を免れるための方法について解説します。

  1. (1)民法改正|相続財産管理人から相続財産清算人に

    令和5年4月1日の民法改正により、相続財産管理人は、相続財産清算人に名称が変更されました。基本的な役割は相続財産管理人と同様です。

    相続財産清算人の選任は、相続人がいない場合か、相続人全員が相続放棄した場合に必要になります。相続財産清算人が選任されれば、その者が相続財産の管理義務を負うことになるため、相続放棄した人は管理義務を免れることができます。また、家庭裁判所の許可が必要ですが、賃貸借契約の解除や預金口座の解約・払い戻し、不動産や家具家電の売却などの財産処分が可能になります

  2. (2)管理義務を免れるためには│相続財産清算人の選任

    前述の通り、相続財産の管理義務を免れるためには、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申請する必要があります。

    もっとも、相続財産清算人が必要になるのは、すべての法定相続人が相続放棄する場合であり、他の相続人が遺産を受け継ぐ場合には、管理を相続人にお願いするのもよいでしょう。ただし、不動産の名義変更など相続手続きが完了するまでは、相続放棄していたとしても管理義務は発生しますので、注意が必要です。

  3. (3)管理組合から片付けの要請があったら│弁護士への相談

    マンションなどの集合住宅の場合、管理組合から故人の家の片付けを求められることがあります。その場合は早めに弁護士に相談しましょう。相続財産清算人が選任されていなければ相続人に管理義務があり、管理組合からの要請に対応しなければなりません。まずは弁護士に片付けてもいい範囲を聞き、相続財産清算人の選任について相談しましょう

4、相続放棄は早い段階で弁護士に相談を

相続放棄を考えている場合には、すぐにでも弁護士に相談することをおすすめします。相続放棄は、期限内に必要書類を用意するなど、さまざまな法律上の手続きが発生します。弁護士に早期に相談して、相続放棄に向けて取り組むべきことを紹介します。

  1. (1)相続放棄の期限内に手続きを完了する

    相続放棄の申請は、原則として相続開始から3か月以内にしなければなりません。申請のためには書類を作成し、所轄の家庭裁判所に提出します。相続放棄の書類は、配偶者・子ども、直系尊属(両親・祖父母)・兄弟姉妹によって必要となるものが異なり、孫の場合は戸籍謄本等で代襲相続を証明する必要もあります。

    必要書類の取得に時間がかかることもあるため、書類の不備や再提出などで3か月たってしまうということもありえるため、早めに弁護士に相談することをおすすめします

  2. (2)家の片付けについて具体的なアドバイスを得る

    相続問題の解決実績がある弁護士に依頼すれば、相続放棄する場合に、どのようなものなら片付けてよいのか、片付けてはいけないのか、具体的なアドバイスを得ることができます。また、相続財産清算人の選任が必要なケースであれば、あわせて手続きを依頼することができます。

    相続は、手続きや遺産分割を通じて親族間で思わぬもめ事に発展することも珍しくありません実績ある弁護士に早めに相談しておくことでスムーズな相続が実現できるでしょう

5、まとめ

相続放棄を考えている場合、故人の家の片付けを安易に行ってはいけません。財産に手を加えることは、たとえ遺品の整理や片付けだとしても、相続の意思があるとして相続放棄が認められなくなってしまうおそれがあります。

相続放棄を検討しているのであれば、まずは弁護士にしっかり相談をして、どのようなものであれば片付けしていいのか確認しましょう。ベリーベスト法律事務所 熊本オフィスでは、遺産相続問題の解決実績がある弁護士が、相続の疑問やご不安が解消されるようアドバイスを行うことが可能です。相続人になった方や相続放棄を考えている方は、ぜひ当事務所にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています