遺産とは? 相続財産の対象範囲や知っておきたい遺産相続の基礎知識
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- 遺産とは
熊本市のホームページでは、相続に関係する手続きなど、あらゆる情報が掲載されています。熊本市コールセンターのひごまるコールを使用すれば、親族が亡くなったときに行う手続きのまとめを確認しながら進めることができ、非常に便利でしょう。
被相続人であるご家族が亡くなると、死亡手続きを進めるとともに相続が開始します。しかし、そもそもどのような財産が「遺産」に該当し、どう手続きを進めるべきかわからないという方も多いのではないでしょうか。
本コラムでは、遺産相続の基本を理解するために、遺産の対象範囲や具体例、相続に関する基本的な言葉や知識、紛争になりやすいケースなどについて、ベリーベスト法律事務所 熊本オフィスの弁護士が解説します。
1、遺産とは? 遺産相続で知っておきたい基本の言葉
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(1)遺産とは
「遺産」とは、亡くなられた方(被相続人)から相続人に引き継がれる財産のことを指し、「相続財産」といわれることもあります。
一般的に「遺産を相続する」という場合には、現金や預貯金、貴金属、土地・建物など価値のあるものを受け取るイメージを抱いている方が多いのではないでしょうか。
しかし実際、遺産に含まれるものはプラスの財産のみに限られず、借金などのマイナスの財産も対象となります。
民法には、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と規定されています(民法第896条)。遺産相続の対象となる具体的な財産については後ほど2章で詳しく解説します。 -
(2)相続の基本知識
親族が亡くなった場合、相続が開始することになります。ここでは、遺産相続に関して知っておきたい基本的な言葉の意味や定義について簡単に解説していきます。
・相続人
「相続人」とは、相続権を有する者です。相続人は民法に規定する者に限られます(法定相続人)。相続人になる可能性があるのは、原則的には亡くなった方の配偶者・子ども・直系尊属(父母、祖父母など)・兄弟姉妹です。
・被相続人
「被相続人」とは、亡くなられた方です。被相続人の死亡を原因として被相続人の財産上の地位を相続人に承継させる制度が相続制度です。
・相続税
「相続税」とは、亡くなった方から各相続人等が相続や遺贈などにより取得した財産の価額の合計額が基礎控除額を超える場合に発生する税金のことです。相続税の申告および納税が必要となった場合、納付期限は、被相続人が亡くなったことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内です。
・単純承認、限定承認、相続放棄
「単純承認」とは、プラスの遺産・マイナスの遺産を問わず、被相続人の権利義務を無条件かつ無制限に相続人が承継することをいいます。
「限定承認」とは、相続によって得たプラスの財産の範囲内でのみ被相続人の総務・遺贈を弁済するという条件付きの相続承認のことをいいます。
「相続放棄」とは、相続人がすべての遺産の相続を拒否することです。
・遺産分割
「遺産分割」とは、遺産の共有状態を解消し、各共同相続人の間で個々の相続財産を配分し、その帰属先を決定することをいいます。遺産分割を話し合いで行い、その内容を記載した書面を「遺産分割協議書」といいます。
・遺留分
「遺留分」とは、相続人に法律上確保された最低限度の遺産のことをいいます。遺言や遺産分割では、相続財産の分配等について自由に決めることができますが、一定の相続人の遺留分を侵害することはできません。
・特別受益
「特別受益」とは、一部の相続人だけが被相続人から特別に得ていた利益のことをいいます。特別受益があった場合には、特別受益を考慮するために「持ち戻し」を行うことで相続財産を計算することになります。
・寄与分
「寄与分」とは、被相続人の家業を無償で手伝った・長期にわたり療養介護を担ったなどの理由で、相続人が被相続人の財産の維持・増加のために行った「特別の寄与」のことをいいます。相続人は、この寄与分について、遺産分割で法定相続分を超える財産を相続できます。
2、遺産相続の対象となるもの、対象にならないもの
ここでは、遺産相続の対象となるもの、対象とならないものについて解説していきます。
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(1)相続財産の対象となるもの
相続の対象となるものは、「被相続人の財産に属した一切の権利義務」です(民法第896条)。したがって、プラスの財産のみならずマイナスの財産も相続財産となります。
プラスの相続財産については、以下のようなものがあります。- 現金、預貯金
- 土地、建物などの不動産
- 株式、投資信託、社債などの有価証券
- ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)
- 売掛金、貸付金、立替金などの債権
- 慰謝料請求権、損害賠償請求権
- 借家権、借地権
- 自動車、家具、家電、貴金属、骨董品などの動産
マイナスの相続財産については、以下のようなものがあります。
- 住宅ローン、自動車ローン、クレジットカードの未決済分などの借金
- 買掛金
- 医療費や水道光熱費などの未払いの経費
- 未払いの所得税、住民税などの税金
- 未払いの家賃、地代
- 未払いの慰謝料債務、損害賠償債務
- 保証債務
マイナスの財産を相続人が引き継いだ場合には、相続人が弁済する義務を承継することになります。
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(2)相続財産の対象にならないもの
次に相続財産に該当しないものについては、以下のようなものがあります。
・遺族給付金
遺族給付金とは、被相続人と一定の関係がある人に対して支給される金銭のことをいいます。遺族給付金には、遺族基礎年金・遺族厚生年金・遺族共済年金などがあります。
これらは受取人である遺族の固有の権利であると考えられているため、相続の対象となる遺産には含まれません。
・賃貸物件の家賃、株式の配当
被相続人が所有しているマンション・アパートなどの収益不動産から継続的に得られる賃料は遺産に含まれません。賃料は相続開始後に生じた財産であるため、遺産ではなく共同相続人に帰属する新たな共有財産となります。遺産分割が確定するまでの賃料については、法定相続分に従って各相続人が権利を有することになります。
・一身専属的な権利・義務
被相続人の一身専属的な権利・義務については相続財産の対象外となります。具体的には、生活保護受給権、年金受給権、扶養請求権、身元保証人としての地位などが一身専属的な権利になります。
・使用貸借上の借主たる地位
使用貸借については、借主の死亡によって終了すると規定されています(民法第597条3項)。
・祭祀財産
墓地、墓石、位牌、仏壇、仏具、遺骨など祭祀(さいし)に関わる財産の所有権は、慣習に従って先祖の祭祀を主宰すべき者が承継するとされています(民法897条1項)。したがって、祭祀財産については相続財産にはならず、特定の人が単独で承継することになっています。
3、相続争いになりやすい遺産相続のケース
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(1)遺言の内容が不公平なケース
相続人間に不平等・不公平な内容となっている遺言書がある場合には遺産相続トラブルが起こりやすいといえます。
たとえば、特定の相続人にのみ多くの相続財産を残すとした場合や、逆に、特定の相続人に全く財産を残さないような遺言書が残された場合には、不満を持つ相続人が現れ紛争に発展しやすくなります。
また、法定相続人には遺留分という最低限度の取り分が保障されていることから、保障分の財産を取り戻すために遺留分侵害額請求が行われる可能性もあります。 -
(2)相続人が多い、相続人間の関係がほとんどないケース
相続人が多い場合には、仲の悪い親族間で相続トラブルが発生する可能性があります。相続人間に不和がある場合、相手方に対して「あいつには渡したくない」「過剰に多くもらっている」という感情を抱きがちです。
また逆に、相続人間の関係がほとんどない場合も紛争になる場合があります。遺産分割協議は相続人全員で行う必要がありますが、関係が希薄な場合には、分割協議を進めることは容易ではありません。相続人の誰かが積極的に協議の申し入れをしようと思っても、そもそも連絡先すらわからない・連絡しても無視されているといった事態になりかねません。 -
(3)相続財産が使い込まれているケース
被相続人の現金や預貯金が親族によって使い込まれている場合も、相続紛争に発展する可能性があります。
特に、生前相続人の日常生活や身の回りの世話をしていた親族が、現金を過剰に引き落としていたり、一部を自分の支払いに充てたりしていると、他の相続人から返還の請求がなされることがあります。
4、遺産相続の相談先は「弁護士」がよい理由
遺産相続の相談先は、相続トラブルの実績がある弁護士がおすすめです。
まず、相続財産や相続人が不明確な場合、弁護士に依頼することで、適切な財産調査や相続人調査をしてもらうことができます。
また、遺産分割協議については、原則として相続人全員で行う必要があるため、相続人を欠いて遺産分割を完了してしまうとやり直しになるリスクもあります。そのため、弁護士に戸籍調査を依頼することで法定相続人を迅速に把握することができます。
さらに、相続人間の話し合いや交渉についても弁護士に一任できます。それぞれの相続人の要望や言い分を聞き取り、適切な内容で遺産分割できるように分割案などを提示してもらうことも可能です。
相続人同士での話し合いが難航し、遺産分割協議が調わない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停・審判手続きを申し立てることになります。
裁判手続きになった場合であっても、弁護士であれば引き続き対応をお願いでき、証拠に基づいて適切な主張・立証を行ってくれます。弁護士が代理人についていれば、調停手続きもスムーズに進む可能性が高まります。
相続に関しては、各種手続きに期限があったり、紛争が長期間にわたったりする可能性があります。相続人同士の関係がこじれてしまう前に、相続手続きの経験がある弁護士に任せ、適切な協議を進めていくことが最も早い解決方法となる場合があります。
5、まとめ
この記事では、遺産の対象となる具体的な財産や遺産相続に関する初歩的な用語についてご紹介しました。遺産相続は、思わぬ紛争に発展するケースもあるため、対応に不安がある方は、一度弁護士にご相談されることをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 熊本オフィスには、相続トラブルの解決実績がある弁護士が在籍しております。まずは、抱えているお悩みについてお聞かせください。解決に向けて真摯にサポートします。
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