「ゆうちょ銀行」の郵便貯金を相続するときの期限や注意点を解説

2021年01月07日
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「ゆうちょ銀行」の郵便貯金を相続するときの期限や注意点を解説

熊本県のデータによると、平成29年10月から平成30年9月の1年間において、熊本県内の出生者は14524名、死亡者は21533名であり、7009名の自然減となっています。

相続においてはさまざまな要素が問題となりますが、そのひとつが、「預貯金の相続手続き」です。
銀行口座にはさまざまな種類がありますが、そのなかでも「ゆうちょ銀行」の利用率は、とりわけ高くなっております。
そのため、ゆうちょ銀行の窓口で相続の手続きを行われる人も多いでしょう。

本コラムでは、ゆうちょ銀行の郵便貯金を相続する際の注意点や手続きの流れなどについて、ベリーベスト法律事務所 熊本オフィスの弁護士が解説いたします。

(出典:「平成30年熊本県推計人口調査結果報告(概要)」(熊本県))

1、ゆうちょ銀行の利用率は高い

日本全体において、ゆうちょ銀行の利用率は非常に高くなっています。

2007年に営業を開始したゆうちょ銀行は、2020年3月末時点において、通常貯金口座数が約1億2000万となっています。
同一の人物が複数の口座を持つ例もあるので、どの程度の人数がゆうちょ銀行の口座を持っているのかは正確に測ることはできません。しかし、日本の人口が約1億3000万人であることをふまえると、郵便貯金の普及率が非常に高いことは間違いないでしょう。

また、家計部門の預貯金において、ゆうちょ銀行の郵便貯金が占める割合は、推計で約20%とされています。
金融機関が数多く存在するなかで、預貯金に対するゆうちょ銀行のシェアが20%もあるということからは、いかに大多数の国民がゆうちょ銀行で資産を管理しているかをうかがい知ることができるのです。

(出典:「ゆうちょ銀行の特徴」(ゆうちょ銀行))

上述したように、ゆうちょ銀行の利用率は全国的に非常に高くなっています。
そして、遺産相続において被相続人(死亡して、遺産を残す人)となる可能性が高い高齢者も、ゆうちょ銀行に口座を持っている場合が多いのです
そのため、相続が発生した場合には、ゆうちょ銀行の郵便貯金の相続が問題となる可能性が高いのです。

2、ゆうちょ銀行の相続手続きの特徴と注意点

ゆうちょ銀行の口座に納められている郵便貯金を相続するためには、ゆうちょ銀行の定める相続手続きにしたがう必要があります。

ゆうちょ銀行の相続手続きには、他の金融機関にはない特徴的な点が、複数存在します
ゆうちょ銀行の相続手続きの特徴と注意点について、解説いたします。

  1. (1)相続確認表の提出が必要

    ゆうちょ銀行の相続手続きを開始するにあたっては、相続人はゆうちょ銀行に対して、「相続確認表」という書類を提出する必要があります。これは、ほかの銀行口座では要求されない、ゆうちょ銀行に独自の書類です。

    (参考:「相続確認表」(ゆうちょ銀行))

    ゆうちょ銀行の相続手続きでは、相続の内容によって、必要とされる書類が異なります。
    相続が起こるにいたったパターンによって、手続きの有効性を確認するためにどのような書類が必要とされるか、ゆうちょ銀行内部でマニュアル化されているのです。
    具体的には、以下のように分けられます。

    • 遺産分割協議で相続の内容を決めた場合(遺産分割協議書が必要)
    • 遺言書の内容にしたがった場合(遺言書が必要)
    • 調停や審判に発展した場合(調停調書、審判書が必要)


    「相続確認表」は、相続の内容などについての「問診票」のような役割を持つ書類といえます。

    ゆうちょ銀行では、相続確認表の記入内容を確認したうえで、相続手続きに必要な書類を個別に案内することになっているのです。

    相続確認表は、多くの方にとって見慣れない書面であると思われます。
    しかし、ゆうちょ銀行の窓口で相談をすれば、記入方法についてのアドバイスを受けることができます

  2. (2)相続Web案内サービスを利用すればステップを省略可能

    相続確認表を提出する場合には、ゆうちょ銀行の窓口へ持参する必要があります。
    しかし、「相続Web案内サービス」を利用すれば、相続確認表の提出に代えてWeb上で手続きを行うことにより、直接、必要書類の提出に進むことができるのです。

    (参考:「相続Web案内サービスのご案内」(ゆうちょ銀行))

    相続Web案内サービスは、相続確認表と同様に、「相続手続きにはどのような書類が必要となるか」ということを確認するためのもの、という位置づけになっています。

    インターネットに慣れた方にとっては、相続確認票の提出よりも「相続Web案内サービス」の方が便利である場合が多いと思われます
    ただし、被相続人がゆうちょ銀行で投資信託の取引を行っていた場合には、相続Web案内サービスを利用することはできませんので、この点には注意してください。

  3. (3)相続払戻金の受け取りは現金またはゆうちょ口座への振替のみ

    相続手続きが完了した後には、相続払戻金の受け渡しが行われることになります。

    ゆうちょ銀行の相続手続きでは、受け渡しの方法は「現金」または「ゆうちょ口座への振替」のいずれかとなります。

    現金での受け取りを選択した場合には、ゆうちょ銀行の窓口に出向いて、出金した現金を手渡しされることになります
    ゆうちょ口座への振替を選択した場合には、代表相続人の通常貯金口座へ相続払戻金の入金が行われます。

    ゆうちょ銀行以外の他行口座を相続払戻金の入金先として指定することはできません。
    したがって、相続人が振替を希望しているがゆうちょ銀行の口座を持っていない場合には、新規に口座を開設する必要があるのです。

3、郵便貯金の相続に期限はある?

預貯金の相続については「特定の期限にまで相続を済まさなければ、預貯金が失われて相続できなくなってしまうのではないか」という不安を抱かれる方も多いでしょう。
ゆうちょ銀行を利用した相続に関わる期限の問題について、解説いたします。

  1. (1)原則として相続手続きに期限はない

    郵便貯金の相続手続きには、法律においても、ゆうちょ銀行内部の手続きにおいても、期限は特に設けられていません。
    遺産分割協議に時間がかかってしまい、郵便貯金の相続手続きを行うタイミングが遅れてしまったとしても、基本的には、払い戻しの権利が失われることはないのです

  2. (2)例外的に払い戻しが受けられない場合に注意

    以下の要件をすべて満たす郵便貯金については、例外的に、払い戻しを受けられなくなってしまいます。
    当てはまる可能性の低い限定的な要件とはいえ、念のために、確認しておいた方がよいでしょう。

    • 平成19年9月30日以前に預け入れられた定額郵便貯金、定期郵便貯金または積立郵便貯金であること
    • 満期後20年2か月を経過してもなお、払い戻しの請求がないこと
  3. (3)相続税申告の期限にも注意

    郵便貯金の相続手続きを急ぐ必要がないからといって、遺産分割協議に時間がかかり過ぎてしまうと、「相続税の申告期限」が到来してしまう可能性があります。

    相続税の申告期限は、「相続人が被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月後」です
    この期限を過ぎてしまった場合、相続税に関する各種控除が利用できなくなってしまうなど、相続人にとってさまざまな不利益が生じてしまうのです。

    そのため、遺産分割協議を行う際には、早い段階から弁護士に相談をして速やかに解決することが重要となります。

4、ゆうちょ銀行の相続手続きの流れ

ゆうちょ銀行の預貯金を相続する際の、具体的な手続きの流れについて解説いたします。

  1. (1)相続の申し出・相続確認表の提出

    手続きを開始する際には、ゆうちょ銀行または郵便局の窓口に相続の申し出を行います。
    窓口では、相続確認表を記入したうえで提出します。

    なお、先述したように、相続Web案内サービスを利用すれば、相続確認表の提出を省略することができます。

  2. (2)「必要書類のご案内」の受け取り・必要書類の提出

    窓口で相続確認表を提出するか、相続Web案内サービスで必要事項を送信した後には、ゆうちょ銀行の側で必要書類の確認が行われます。

    そして、相続の申し出から1~2週間程度経った段階で、ゆうちょ銀行から「必要書類のご案内」という書面が郵送されることになります。

    「必要書類のご案内」には、相続手続きに必要となる書類が列挙されています。この案内の指示にしたがって、必要書類を準備しましょう。

    なお、必要書類の提出は、原本をゆうちょ銀行または郵便局の窓口に持参して行います。

  3. (3)相続払戻金の受け取り

    必要書類を窓口に提出したら、さらに1~2週間程度、「書類内容に問題はないか」についての審査がゆうちょ銀行にて行われます。

    審査が問題なく完了すれば、相続払戻金の受け渡し手続きに移行することができます

    相続払戻金の受け渡しは、相続人の選択に応じて、「現金での受け渡し」か、「代表相続人のゆうちょ口座への振替」のいずれかの方法によって行われます。

    代表相続人のゆうちょ口座へ相続払戻金が振り込まれた場合には、遺産分割協議の結果にしたがって、代表相続人から他の相続人たちに相続払戻金を分配することになるのです。

5、まとめ

ゆうちょ銀行の相続手続きでは、他の金融機関とは異なる、独自の手順をふまえむ必要があります。
手続きで分からないことがあった場合には、ゆうちょ銀行や郵便局の窓口で相談すれば、書類の記載方法などについてアドバイスを受けることができるでしょう。

相続手続きには、原則として期限は設けられていません。ただし、「平成19年9月30日以前に預け入れられた満期のある郵便貯金」は、満期後20年2か月が経過すると引き出せなくなってしまいます。この点については、念のために注意しておきましょう。
また、相続税申告の期限が到来する前に遺産分割協議を完了することも大切です。もし、遺産の分配をめぐってトラブルが発生している場合には、速やかに解決することが重要になります

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