家族以外に遺産相続したい場合の手続きと注意点

2025年02月20日
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家族以外に遺産相続したい場合の手続きと注意点

熊本県の令和4年の死亡者数は2万4427人で、前年よりも2334人増加しています。

財産を残して亡くなると、自動的に相続が開始され、相続財産はすべて相続人に引き継がれるのが原則ですが、「家族(法定相続人)以外にも相続させたい」と考える、被相続人の方もいるでしょう。

この記事では、家族以外に相続財産を譲り渡す方法や、その場合の注意点、弁護士に相談すべき理由などについて、ベリーベスト法律事務所 熊本オフィスの弁護士が解説していきます。


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1、遺産相続で家族以外に相続財産を譲る方法

家族(法定相続人※)以外に遺贈するためには、以下の2つの方法があります。
※法定相続人=民法で相続の権利を持つと定められた家族や親族

  • 特定遺贈
  • 包括遺贈


「特定遺贈」とは、遺産の中の特定の財産を指定して、特定の人に承継させる方法です。特定遺贈をするためには、遺言書に遺贈したい財産と相手(受遺者という)を指定しておく必要があります。

特定遺贈の例
  • 「自宅の土地をAさんに遺贈する」
  • 「銀行預金をBさんに遺贈する」


「包括遺贈」とは、全財産または一定割合の財産を包括的に特定の人に引き継がせる方法です

特定遺贈の例
  • 「全財産の半分をCさんに遺贈する」
  • 「所有する車をEさんに遺贈する」


法定相続人以外に財産を譲りたい場合には、上記の内容で「遺言書」を作成することで可能となります。

ただし、法定相続人には「遺留分」という最低限保障された取り分があります。そのため、法定相続人がいる場合、すべての財産を法定相続人以外に遺贈したいと考える場合には注意が必要です。詳しくは3章で解説します。

2、遺言書の種類と作成する方法

ここでは、遺言書の種類と具体的な作成方法を解説します。遺言の種類は大きく分けると「普通方式遺言」と「特別方式遺言」の2種類に分けられます。

以下では、それぞれのメリット・デメリットと遺言の注意点などについて解説していきます。

  1. (1)普通方式遺言と作成のメリット・デメリット

    普通方式遺言とは、遺言の方式のひとつで、以下の3種類の方法があります。

    • 自筆証書遺言
    • 公正証書遺言
    • 秘密証書遺言


    「自筆証書遺言」とは、遺言者が遺言の全文、日付、氏名を自筆で書き、押印して作成する遺言書です。
    費用がかからず、ご自身でいつでも作成でき、遺言の内容を秘密にしておけるというメリットがあります
    しかし、遺言の方式に不備があった場合には、遺言書が無効とされてしまうデメリット、死後に遺言書が発見されないリスク、偽造・変造・隠匿のおそれなどがあります。また、自筆証書遺言は、家庭裁判所の「検認」の手続きが必要となります。

    次に、「公正証書遺言」とは、公証人が作成に関与する遺言書です。
    公正証書遺言の作成は、公証人役場で遺言者本人が公証人に、遺言の内容を口述し、公証人がそれを文書にまとめます。
    国家資格者である公証人が遺言の作成に関与するため、形式的不備により遺言が無効となることはなく、遺言の内容についても争いになることが少ない点がメリットです。
    ただし、公証人のほか、証人2名の立会人が必要となる手間や、費用が発生する点がデメリットといえます

    「秘密証書遺言」とは、遺言書の内容を秘密にしたまま、公証役場で遺言の存在を証明してもらう遺言書です。
    偽造や改ざんを防止でき、遺言執行まで遺言書の存在を伏せることができます。ただし、第三者による内容のチェックがなく、証人2人の立会いが必要となります。また、自宅で保管するため紛失や開封されてしまうリスクがデメリットとなります。
    秘密証書遺言も、家庭裁判所の「検認」の手続きが必要となります。

  2. (2)特別方式遺言と作成のメリット・デメリット

    特別方式遺言とは、遺言者の死亡が迫っている場合や一般社会から隔絶されている状況下で作成される遺言の方式です。

    特別方式遺言には、次のような種類があります。

    • 危急時遺言
    • 隔絶地遺言(伝染病隔絶地遺言、船舶隔絶地遺言など)


    危急時遺言とは、遺言者が死亡の危機に瀕した場合には、遺言内容を口頭で伝えられるというメリットがあります。ただし3人以上の証人が必要となるため、緊急時に対応が難しいというデメリットがあります。

    隔絶地遺言とは、遺言者が隔離病棟や船舶内など外部と連絡がとれない特殊な状況(隔絶地)にいる作成される、特別な方式の遺言です。

    なお、遺言を作成したときから6か月間、遺言者が生きている場合には、特別方式遺言は無効となります。

3、家族以外に遺産相続する場合の注意点

親族以外の受遺者に遺産相続をする場合、どのような点に注意しておけばよいのでしょうか。
ここでは、遺言書で法定相続人以外の受遺者に遺贈する場合の、注意点をご紹介します。

  1. (1)遺留分の侵害に注意する

    家族(法定相続人)以外の人に遺贈をする場合「遺留分の侵害」に注意する必要があります。
    遺留分とは、被相続人の意思によっても奪うことができない、相続人の最低限度の取り分のことです。

    第三者に相続財産を承継する遺言がある場合には、相続人が反発し、遺留分を侵害したとしてその分を請求されるおそれがあります。

    遺留分権利者となれる法定相続人は、以下のとおり「兄弟姉妹以外の相続人」です(民法第1028条)。

    • 被相続人の子及びその代襲相続人
    • 被相続人の直系尊属
    • 被相続人の配偶者


    上記の法定相続人の遺留分を侵害する内容で遺贈すると、受遺者が遺留分権利者から遺留分侵害額請求をされるおそれがあります。そのような事態を回避するためには、事前に関係者に共有しておくことも重要でしょう。

  2. (2)遺言執行者を指定しておく

    遺言執行者を指定しておくことは、相続手続きをスムーズに進めるために重要です。

    遺言執行者は、単独で登記手続きができる権限などを有しており、相続手続きを円滑に進めるため、遺言によって指定しておくことがおすすめです

    遺言執行者が相続人と同一でも問題ありませんが、相続人の中から指定すると他の相続人が反発する可能性が高くなるので、弁護士や司法書士などの第三者的立場の人を選任する方が得策といえるでしょう。

  3. (3)公正証書の作成を検討する

    法定相続人以外に財産を引き継がせたいという場合には、公正証書遺言で作成することをおすすめします。

    公正証書遺言は、公証役場に遺言の原本が保管されるため、偽造や変造、隠匿のリスクが回避できます。また、家庭裁判所の検認が不要であるため、遺言の内容が迅速に実現できます。さらに、公正証書遺言は公証人が作成に関与するため、書き方の不備などによるトラブルも回避できます。

    公正証書遺言は遺言の信用性が高く、内容について争われるリスクが低くなるため、遺言者の意思が実現できる可能性が高まります。

  4. (4)相続税が2割加算される

    遺贈によって財産を第三者に譲った場合には、贈与税ではなく相続税が課されることになります。

    遺言者の両親・子(代襲相続人となった孫)・配偶者ではない第三者が贈与や遺贈を受けた場合には、課税される相続税は2割加算されることになります。

    2割加算されるケース 2割加算されないケース
    • 被相続人(財産を遺す人)の兄弟姉妹
    • 被相続人の甥や姪
    • 被相続人と血縁関係のない第三者(友人・知人・内縁の妻や子など)
    • 被相続人の両親
    • 被相続人の子(代襲相続人である孫を含む)
    • 被相続人の配偶者


    親族以外に遺贈をしたい場合には、2割加算される点も考慮して財産を譲り渡す必要があります。

4、遺産相続の悩みを弁護士に相談するメリット

遺産相続については、実績のある弁護士に相談することで、トラブルや相続争いを回避できるメリットがあります。

弁護士は法的な知見に基づき、相続財産の精査や遺言書の作成を行います。また、家族以外に遺産を相続させる場合のトラブル回避のためのアドバイスも併せて行います。

相続が開始した後も、弁護士を遺言執行者として指定しておけば、相続争いを回避し、スムーズに相続を進められるでしょう。早めに頼れる弁護士に手続き全体を任せておくことが、もっとも効率的かつ正確に相続を行うためには重要といえます。

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5、まとめ

遺産を法定相続人以外の第三者に確実に譲り渡したいという場合には、公正証書によって遺言を作成することをおすすめします。

ただし、遺贈を検討している場合には、ご本人の生前に受遺者となる方に遺贈の内容などをあらかじめ伝えておくことが重要です。

相続の判断や、遺言の方法などについて悩まれている方は、ぜひベリーベスト法律事務所 熊本オフィスの弁護士にご相談ください。当事務所には、相続問題の解決実績がある弁護士が在籍しておりますので、お力添えいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています