交通事故によるむちうちの後遺障害等級が「12級」になる場合とは?
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- むちうち
- 12級
熊本県の統計によると、2020年中の熊本県内における交通事故の発生件数は3152件で、前年比952件の減少となりました。
「むちうち」は、交通事故の後にもっとも頻繁に発生するケガの一つです。むちうちは治療により完治することも多いですが、場合によっては、痛みやしびれなどの症状が治らずに残ってしまうこともあります。
その場合、後遺障害等級の認定を受ければ、加害者側に対して後遺症慰謝料や逸失利益を請求することが可能になります。特にむちうちの場合、認定される後遺障害等級が12級か14級かによって、後遺症慰謝料や逸失利益の金額が大きく変わります。
できる限り高額の賠償を受けたい場合には、弁護士のサポートを得ながら対応することをおすすめします。本コラムでは、交通事故によるむちうちが完治しなかった場合に、後遺障害12級の認定を受けるためのポイントについて、ベリーベスト法律事務所 熊本オフィスの弁護士が解説します。
(出典:「交通事故統計(令和2年中)」(熊本県警察))
1、むちうち後に残る後遺症の症状は?
むちうちは、交通事故による強い衝撃が頸部(けいぶ:首)に加わることで発生します。
基本的に、むちうちは頸部の神経が損傷することで発生します。そのため、痛みやしびれなどの症状が発生していても、外見からは原因がわかりにくいという問題があるのです。
痛みやしびれなどの症状が治療によっても治りきらない場合、「神経障害」として後遺障害等級が認定される対象となります。
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(1)神経障害|痛みやしびれが残る場合がある
むちうちが完治せず、首やその周辺、手足などに痛みやしびれが残る場合があります。
これらの痛みやしびれは「神経障害」と呼ばれ、後遺障害等級が認定される対象とされています。
神経障害を引き起こす要因は、医師の診察によって明らかになる場合とならない場合の両方がありますが、自覚症状だけでも後遺障害等級の認定を申請することは可能です。
もっとも、症状の存在が医師の診察や神経学的検査(スパーリングテスト、ジャクソンテストなどです。)によって明らかな場合や、レントゲンやMRI(磁気共鳴画像装置)による画像所見が確認できる場合の方が、後遺障害等級は認定されやすくなります。 -
(2)神経障害には後遺障害12級または14級が認定される
むちうちによる神経障害は、症状の内容・程度に応じて、後遺障害等級の「12級」または「14級」が認定される可能性があります。
後遺障害等級表に基づく認定基準は、以下のとおりに定められています。
実務上では、症状を裏付ける画像所見の有無が12級か14級かの分かれ目となっています。
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの 14級9号 局部に神経症状を残すもの
2、後遺障害等級認定の申請方法は2種類
後遺症に関する損害賠償を加害者側に請求するためには、後遺障害等級の認定を受けることが必要とされます。逆に言えば、後遺症が発生しても後遺障害等級が認定されない場合には、通常、後遺症に関連する損害賠償を請求することは困難です。
後遺障害等級認定の申請は、損害保険料率算出機構に対して行います。
(参考:損害保険料率算出機構HP)
申請方法は、「事前認定」と「被害者請求」の二種類となります。
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(1)事前認定
「事前認定」とは、後遺障害等級認定の申請を、加害者側の任意保険会社に任せることをいいます。
事前認定では被害者が自分で申請書類を準備する必要がないため、被害者の手間が大きく軽減されるメリットがあります。
しかし、加害者側の任意保険会社が申請手続きを進めるという特性から、被害者側からみて手続きの透明性に欠けるという難点があります。
また、手続きの途中で被害者に有利な書類を追完することができないため、結果的に、正当な後遺障害等級の認定を受けられないおそれがあります。 -
(2)被害者請求
「被害者請求」とは、後遺障害等級認定の申請を、被害者が自ら行うことをいいます。
被害者請求の場合、被害者が申請書類をすべて自分で準備しなければならないので、事前認定よりも申請に手間がかかります。
しかし、被害者が自分のペースで手続きを進められるほか、損害保険料率算出機構の要請に応じて書類を追完できるため、正当な後遺障害等級の認定を受けられる可能性が高まります。
準備の手間についても、弁護士に申請書類の準備やチェックを依頼すれば、被害者自身が労力をかけることなく被害者請求を行うことが可能となります。
そのため、弁護士に依頼をした上で被害者請求を行うことが、正当な後遺障害等級の認定を受けるための近道といえるでしょう。
3、神経障害における後遺障害12級と14級の違いは?
むちうちで残存した神経障害については、前述のとおり、後遺障害12級または14級が認定される可能性があります。
12級と14級の分かれ目は、症状を裏付ける「画像所見の有無」であり、どちらが認定されるかによって、「後遺症慰謝料」と「逸失利益」という損害賠償の金額が大きく変わってくるのです。
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(1)画像所見があれば12級、なければ14級
後遺障害等級表の文言だけをみると、神経障害の12級か14級かの分かれ目は、神経症状が「頑固」といえるかどうかであるということになります。
しかし、手続上では、画像所見があれば12級、なければ14級と振り分けられることが一般的です。
画像所見とは、症状固定後のレントゲン・MRI・CT(コンピューター断層撮影)などの画像検査により、神経障害の原因となる事象が見て取れる資料のことをいいます(「他覚所見」ともいいます)。
画像所見(他覚所見)があれば、神経障害の原因を医学的に証明できるため、より重い後遺障害12級が認定されることになっているのです。
これに対して、神経障害についての画像所見が得られない場合には、神経障害が交通事故によって生じたという因果関係を医学的に説明できるかどうかがポイントになります。
仮に自覚症状のみであったとしても、交通事故直後から通院をして神経学的検査などを行い、交通事故によって神経障害が生じたことについて医師の後遺障害診断書を得ることができれば、後遺障害14級が認定される可能性があります。 -
(2)12級と14級の後遺症慰謝料の違い
後遺症慰謝料とは、神経障害が残ってしまったことについて、被害者が受けた精神的苦痛を慰謝するために支払われる損害賠償のことです。
後遺障害12級と14級では、以下のとおり、後遺症慰謝料の金額が変わってきます。
<後遺症慰謝料(裁判所基準)>
12級 290万円 14級 110万円 -
(3)12級と14級の逸失利益の違い
逸失利益とは、後遺障害によって労働能力の一部が失われたことについて、将来得られるはずだった収入を補償するために支払われる金銭をいいます。
逸失利益の金額は、以下の式によって計算されます。
逸失利益
=1年当たりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
(参考:「就労可能年数とライプニッツ係数表」(国土交通省) )
神経障害の場合、12級と14級では、労働能力喪失率と労働能力喪失期間について、それぞれ以下の違いがあります。
労働能力喪失率 労働能力喪失期間 12級 14% 10年程度 14級 5% 5年程度
たとえば、1年当たりの基礎収入が500万円のケースを考えると、12級と14級の逸失利益の金額には、以下のように5倍以上の差が生じるのです。
<12級の逸失利益>
500万円×14%×8.530
=597万1000円
<14級の逸失利益>
500万円×5%×4.580
=114万5000円
このように、むちうちで残存した神経障害について正当な金額の損害賠償を請求するためには、症状に応じた適切な後遺障害等級の認定を受けることが大切です。
4、むちうちで後遺障害12級の認定を目指すには弁護士に相談を
むちうちで残存した後遺症について、12級の認定を受けるためには、まずは画像所見のハードルをクリアする必要があります。
また、12級が認定されるべきことを示す根拠資料をきちんとそろえて、後遺障害等級認定の申請を行わなければなりません。
重要な提出書類に漏れがあると、適切な後遺障害等級の認定を受けられず、結果的に後遺症慰謝料や逸失利益の金額が減ってしまうため、注意が必要になるのです。
弁護士に相談すれば、医師とも適宜コミュニケーションをとりながら、後遺障害等級が認定される可能性を高めるために必要書類を準備することができます。
また、被害者請求の手続きについても弁護士に一任することが可能であり、被害者の労力を大きく軽減することができるのです。
むちうち後の神経障害について、適切な後遺障害等級が認定されることをご希望の方は、お早めにベリーベスト法律事務所の弁護士までご相談ください。
5、まとめ
交通事故によりむちうちになった後、身体に痛みやしびれが残った場合には、12級または14級の後遺障害等級が認定される可能性があります。
12級の認定が受けられた場合には、14級が認定された場合に比べて、後遺症慰謝料や逸失利益は大幅に増額します。
12級の認定を目指すためには、根拠となる資料をそろえて、不備がないように後遺症等級認定の申請を行うことが大切です。
ベリーベスト法律事務所では、交通事故の被害者の方が、治療と並行して無理なく示談交渉などをすすめられるように、面倒な手続きを全面的に代行してバックアップいたします。
交通事故によるむちうちや、その後の神経障害にお悩みの方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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