事故の責任比率によって慰謝料額が変わる! 過失割合の決め方
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2022年に熊本県で発生した交通事故は3175件でした。
交通事故の過失割合(責任割合)は、損害賠償の金額を大きく左右します。被害者が加害者側から適正額の損害賠償を受けるためには、客観的な事故状況に応じて、適切な過失割合による請求を行うことが大切です。
過失割合については、被害者・加害者間で主張が食い違うケースも多いので、示談交渉は弁護士を代理人にして行いましょう。本記事では、交通事故の過失割合による損害賠償額への影響や、実際の過失割合の決め方などをベリーベスト法律事務所 熊本オフィスの弁護士が解説します。
1、交通事故の損害賠償は、過失割合(責任割合)で金額が変わる
交通事故の損害賠償額は、当事者間の過失割合(責任割合)によって大きく変わる場合があります。
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(1)交通事故の過失割合とは
交通事故の「過失割合」とは、事故の発生について、当事者である運転者の間でどちらにどれだけの責任があるかを示したものです。
交通事故を含む不法行為(民法第709条)に基づく損害賠償の金額は、被害者の過失を考慮して減額される場合があります(民法第722条第2項)。
これを「過失相殺」といいます。
被害者の過失が全くなければ、過失相殺は行われないため、被害者は交通事故による損害全額について加害者に賠償を請求できます。
これに対して、被害者に一定の過失が認められれば、過失相殺によって損害賠償額が減額されます。
この場合、被害者は損害全額の賠償を受けることができません。
被害者側の過失が大きければ大きいほど、交通事故の損害賠償額は減額されてしまいます。加害者側から適正額の損害賠償を受けるには、事故の状況に応じた適切な過失割合に基づく請求を行うことが大切です。 -
(2)過失割合に基づく損害賠償額の変化の例
たとえばA車とB車が衝突した交通事故において、A車の運転者のみが1000万円の損害を被ったとします。
A車側の過失が全くない場合、A車の運転者は、B車の運転者に対して1000万円の損害賠償を請求可能です。
これに対して、A社側に1割、B社側に9割の過失が認められる場合、A車の運転者がB車の運転者に対して請求できる損害賠償は900万円に限られます。
上記の例では、過失割合が1割増減すると、損害賠償の金額が100万円も増減します。被害者の受けた損害額がさらに高額の場合は、過失割合が損害賠償額に与える影響もさらに大きくなります。
2、過失割合の決め方
交通事故の過失割合は、原則として、事故の類型に応じた過失割合をベースに、修正要素を考慮した調整を行って計算します。
実際の過失割合は、交通事故の当事者同士(または保険会社)が示談交渉を通じて決定することになります。
しかし、過失割合については意見が対立し、交渉で決定することが難しい場合には交通事故ADRや訴訟を通じて過失割合を決定します。
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(1)基本過失割合を決定する
交通事故の過失割合を計算する際には、まず事故の類型に応じた基本過失割合を決定します。
たとえば信号待ち中の追突事故の場合、前方車と後方車の基本過失割合は「0:100」となります。
また、同幅員の信号機のない交差点における衝突事故の場合、左方車と右方車の基本過失割合は「40:60」です。
実務上は、以下の書籍を参考にしながら基本過失割合を決定することが一般的です。- 「別冊 判例タイムズ38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(東京地裁民事交通訴訟研究会編 判例タイムズ社)
- 「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 上巻(基準編)」(日弁連交通事故相談センター東京支部)
- 「交通事故損害額算定基準-実務運用と解説―」(公益財団法人日弁連交通事故相談センター)
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(2)修正要素を考慮して過失割合を調整する
最終的な過失割合は、基本過失割合を修正要素に基づいて増減させて求めます。修正要素には、道路や当事者の過失の状況に応じてさまざまなパターンがあります。
たとえば、同幅員の信号機のない交差点における直進車同士の交通事故においては、左方車の過失(基本過失割合:40%)に対して、以下の修正要素が適用されます。- 左方車の著しい過失:+10%
- 左方車の重過失:+20%
- 見通しがきく交差点:-10%
- 夜間:-5%
- 右方車の著しい過失:-10%
- 右方車の重過失:-20%
修正要素についても、基本過失割合と同様に前掲の書籍などを参照することが一般的です。
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(3)示談交渉・ADR・訴訟を通じて過失割合を決定する
実際の損害賠償額(保険金額)を算定する際の過失割合は、主に以下の手続きを通じて決定します。
① 示談交渉
当事者同士で直接交渉を行い、過失割合を踏まえた損害賠償額を合意します。
② 交通事故ADR
裁判所以外の機関が取り扱う、交通事故に関する紛争解決手続きです。弁護士などの専門家が、示談あっ旋など紛争解決のサポートを行います。
交通事故ADRは、交通事故紛争処理センターや日弁連交通事故相談センターが取り扱っています。
③ 訴訟
裁判所の法廷で行われる紛争解決手続きです。被害者は加害者側の過失や損害額などを立証し、裁判所に損害賠償を命ずる判決を求めます。
まずは示談交渉を試み、まとまらなければ交通事故ADRや訴訟を利用するという方法が一般的です。
3、相手方の提示する過失割合に納得できない場合の対処法
交通事故の相手方が提示する過失割合が不適切で納得できない場合は、以下の対応を検討してください。
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(1)根拠を示して過失割合を再提示する
相手方が提示する過失割合が交通事故の客観的な状況に基づいていない場合は、正しい過失割合を計算したうえで、その根拠とともに相手方に対して再提示を行いましょう。
説得力のある根拠と併せて過失割合を提示すれば、不利を悟った相手方が和解に応じる可能性があります。 -
(2)弁護士を代理人として交渉する
とくに相手方の保険会社と示談交渉を行う場合は、示談交渉を被害者本人が行うか、それとも代理人弁護士が行うかによって、保険会社の対応が変わる可能性があります。
弁護士が法的な根拠に基づいて損害賠償(保険金)を請求すれば、相手方の保険会社は損害賠償の増額に応じることが多いです。
任意保険会社からは独自の基準(=任意保険基準)に基づき算定した保険金額が提示されますが、弁護士を代理人として交渉すれば、裁判例に基づく客観的な基準(=弁護士基準)による再計算を求めることができます。 -
(3)ADRの申立てや訴訟の提起を行う
相手方と主張内容が大幅に食い違っており、示談交渉がまとまる見込みがない場合は、交通事故ADRの申立てや訴訟の提起も検討しましょう。
いずれも専門性が高い手続きなので、弁護士を代理人として対応したほうが安心できるでしょう。
4、交通事故の損害賠償請求について、弁護士ができること
交通事故の損害賠償請求は、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士は、交通事故の被害に遭った方のために、以下のようなサポートをすることができます。
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(1)適正な損害額・過失割合の検討
交通事故について適正な損害賠償を受けるためには、損害額や過失割合などについて、法的な観点から説得力のある主張を行うことが大切です。
弁護士は、事故の客観的な状況を分析したうえで、適切な損害額や過失割合を検討し、被害者が正しく損害賠償を受けられるようにサポートすることができます。 -
(2)相手方との示談交渉
弁護士は、交通事故の損害賠償請求に関する示談交渉を全面的に代行することができます。
弁護士が法的な根拠を示しながら交渉することで、損害賠償(保険金)の増額が期待できます。
とくに加害者の保険会社と示談交渉をする場合には、対等な立場で交渉を進めるためにも、専門家である弁護士に交渉を依頼することが最善です。 -
(3)交通事故ADR・訴訟の代理対応
交通事故ADRの申立てや訴訟の提起に当たっては、弁護士が代理人として必要な対応を行うことができます。
弁護士が代理人として対応すれば、ADR委員や裁判所に対して、被害者側の主張を説得的に伝えることができます。
専門的な手続きへの対応も、弁護士にお任せいただけます。
5、まとめ
交通事故の過失割合は、損害賠償金額に大きく影響します。
適切な過失割合に基づく損害賠償を受けるためには、弁護士にサポートを依頼しましょう。
ベリーベスト法律事務所は、交通事故の損害賠償請求に関するご相談を随時受け付けております。
交通事故の被害に遭い、加害者に対して損害賠償を請求したい方は、まずはベリーベスト法律事務所にご連絡ください。
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